【話題の社長本】「にしたんクリニック」「イモトのWiFi」西村誠司 ピンチをチャンスに変えた“発想”

■今や全国的に有名「イモトのWiFi」や「にしたんクリニック」

 『最強知名度のつくり方 売上98%減からのV字逆転を実現した必勝術』の著者、西村誠司氏はエクスコムグローバル株式会社の代表取締役社長である。と言っても、社名を聞いたほとんどの人が「何の会社だ?」と思うかもしれない。しかし、同社が関わっている「イモトのWiFi」や「にしたんクリニック」なら、ああ、聞いたことがある、という人が多いのではないだろうか。

  誰もが知る商品、サービスを短期間で創り出した西村氏はマーケティング、ブランディングについて耳目を集める人物である。西村氏は真摯に自社のサービスの知名度向上を目指し、戦略的に取り組んできた。その結果、わずか数年で圧倒的な知名度と、最大級の収益を生み出した。そのテクニックとノウハウを惜しげもなく披露したのが、この一冊である。

  商品を販売するうえで、知名度はとにかく重要である。例えば、消費者が商品を買うとき、ほとんどの人は知名度で商品を選んでいるのではないだろうか。特に二択で迷った場合などは、知らず知らずのうちに、人はそうした消費行動をとっているはずである。

■なぜ消費者は知名度の高い商品を選ぶのか

  西村氏はこうした消費者の心理を、「聞いたことがない商品より、広告でよく見かけるなど、多くの人に知られている商品のほうが安心だからです」と分析しているが、知名度を上げるのは非常に難しい。ご当地商品や伝統工芸を扱う業者などは、しばし「海外ブランドよりもうちの商品の方が品質がいいんだけれどなあ」「ブランド和牛よりもうちの地域の和牛の方がうまい」と嘆くことからも、よくわかる。

  西村氏は、「多くの産業で技術が成熟しつつある今の時代は、大半の企業が『品質まあまあ、機能まあまあ』という、はっきり言ってしまえば、他社と似たり寄ったりのものに対し一生懸命知恵を絞って必死に売っている」と指摘するが、まさにこの指摘通りで、今やほとんどの製品はメーカーが違っていても性能面での差はなくなっている。だからこそ、「売れるか売れないかの明暗を分ける一番重要なポイントはやはり知名度である」というのである。

  そんな西村氏も、大きなピンチに直面したことがある。コロナウイルスが蔓延し、社会が混乱し始めた2020年の初頭のことだ。同社は売上98%減となり、まさに倒産の危機に瀕したという。しかし「にしたんクリニック」でPCR検査の事業を開始、効果的な宣伝戦略をとった結果、ピーク時には1日で1億円を売り上げるという驚異的な業績を達成。2021年8月期の売上高は176億円、営業利益は98億円と、コロナ前を遥かに凌駕する業績を上げることができたのだ。

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