明日カノはまだ終わっていない……『明日、私は誰かのカノジョ』完結記念! をのひなお先生が語る、4年半に渡る連載の裏側

コスプレイヤー、創作活動の闇……今だから言える没になったテーマ

――ここからは連載時の裏話をお伺いできればと思うのですが、話が進んでいくにつれて当初の想定から大きく変わっていた設定やキャラクターはいますか?

をの:描いていくうちにキャラクターへの解像度が上がっていくんですよね。だから、だんだん私も担当編集も「このキャラこんなことしなくない?」って議論になるんです。例えば、このキャラだったらAの方向でいく予定だったけど、絶対にBを選択するよね……みたいな。

――解像度が上がらないと言いますか、一番読めなかったキャラクターは誰ですか?

をの:雪はとにかく扱いづらかったですね。感情表現が乏しいから、どうしても読者さんが飽きる展開になってしまいがちというか。本当はここで雪に笑ってほしいんだけど、絶対笑わないよな、どうしようって。雪にはそういった動かしづらさがありました。

――レンタル彼女、パパ活、整形、ホス狂い、推し活、洗脳、毒親……現代ならではの様々な事情やコンプレックスを描いてきましたが、取り扱うのを断念したテーマはありますか?

をの:いっぱいあります。SNSに生きる意味を見いだしてしまうとか、買い物依存症の女の子の話とか。あと、これは私が冗談で言ったんですけど「創作活動の闇を描くんだ!」って担当編集に話したら「それは明日カノじゃない」って却下されました(笑)。

――そのコミュニティならではのルールというか裏側は、それぞれの界隈ごとに濃いエピソードがありそうですね。

をの:他にもコスプレイヤーさんとか。イベントまで見にいったのに結局没になりました。やっぱり元々が雪の話でスタートしているので、早くしないと雪が大学を卒業しちゃうんですよね。本当は描きたかったけど、時間軸の手前できなかったことは色々あります。

担当編集が選ぶ『明日カノ』ベストエピソード

――今後、描いてみたいテーマや目標がありましたら教えてください。

をの:『明日カノ』が完全に終わったら、今後も何かしら別の作品を描くと思うんですけど……。

担当編集:実は、これまでも新連載の話をしたことがあるのですが、その度に手が止まってしまうので。いや、もう新連載は置いておいてとりあえず『明日カノ』をもう全部やり終えよう!  って話になるんです。

をの:そうですよね。色々と頭に浮かんでは消え……。

――ちなみに、担当編集が選ぶ『明日カノ』ベストエピソードを一つ挙げるとしたらいかがですか?

担当編集:やっぱり自分と年齢が近いということもあって江美の話が一番好きです。性別は違いますが、江美のエピソードからは中年の危機というか、焦燥感を感じるんです。編集部内でも同世代の男性たちから評判がすごく良かったです。あとは、個人的に感慨深かった話としては、彩編の時に取材した湘南の海。最終章でも登場するので、再び取材に行ったのですが、その際に思えば長いことやってきたな……って思いました。

聖地も登場!? エピローグの見どころ

――最後に、本日後編が公開されたエピローグについてお伺いできればと思います。エピローグ前編は沖縄の海から始まりますね。先ほど、担当編集さんから湘南の海の話がありましたが、“海”は本作にとって欠かせない聖地のように感じます。

をの:私自身、海が好きなんですよ。毎年どこかしらの海に行っているくらい。なんだか少しだけ雪と被る話なんですが、子供の頃に海に連れて行ってもらった記憶がないんです。正確には連れて行ってもらったことはあるけど、あまり記憶にない。それで、大人になってから自分で海に行った時に、あぁ、海が好きなんだなって気付いたんです。

――エピローグは『明日カノ』という物語の中でどんな立ち位置なのでしょうか。見どころや注目してほしいところを教えてください。

をの:エピローグは本編の総まとめのような感じで、今まで登場してきたキャラクターたちが2024年に何をしているのか? を描いています。基本的に『明日カノ』という物語は、オチがついて終わるのではなく、みんなその後も生きていくっていう話なんです。だから、エピローグでもその後どうなったかではなく、みんなの日常の一部を描いています。

担当編集:本編では過去か現在の話しか描いてこなかったのですが、エピローグでは初めて未来の話を描いています。言ってしまえば、これまでは後ろを向いた内容だったのが、未来の話だから少し前向きになっているなと。あと、最終話のラストページからエピローグ前編への“繋ぎ”がすごく気持ち良いので注目してほしいです。

【同時公開!】担当編集者・梅崎勇也氏とのトークイベントの模様はこちら

■関連情報
『明日、私は誰かのカノジョ』全話はサイコミにて公開中!
https://cycomi.com/title/118

■コミックス情報
『明日、私は誰かのカノジョ 16』
をのひなお 著
定価:880円(税込)
発売日:2023年11月17日
ISBN:9784098530458
判型:B6判
頁:192頁

(c)をのひなお/Cygames,Inc.

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