ミスチル、安室奈美恵、ハイスタ、宇多田ヒカル……アルバムで振り返る90年代J-POPの潮流

 栗本のディスクレビューの筆致はとても客観的で飲み込みやすい。レビューを通して各ミュージシャンの背景や収録曲の紹介を通して各ミュージシャンやアルバムの90年代音楽シーンにおける立ち位置や意義が立体的に浮かび上がってくるのだ。また合間に挟み込まれたコラムでは、トレンディドラマに代表されるタイアップ、小室哲哉や小林武史といった音楽プロデューサー、そしてそれまではアンダーグラウンドで楽しまれてきた音楽ジャンルの台頭とフジロックの開催に代表される音楽フェス文化の黎明との関係性など、90年代音楽シーンを象徴する3つの要素について記されており、音楽作品だけでなく多角的な視点から90年代音楽シーンを知ることができる1冊となっている。

 音楽シーン史の中で大きな転換期となった90年代。今に至るまでシーンに多大な影響を与えている90年代という時代を知る上で、『「90年代J-POPの基本」がこの100枚でわかる!』は必携の1冊だ。ディスクガイドとしてはもちろん、J-POP史を解き明かす歴史本としても読んでほしい。

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