希代の仏師・運慶が追求した祈りの世界を究極まで表現した、六田知弘の最新写真集に注目

 写真家・六田知弘が挑み、運慶仏に宿る「祈り」を写し取った『運慶 六田知弘写真集』(求龍堂)が発売された。仏教美術の最高峰、運慶仏。運慶800年遠忌の2023年を記念し、同年創業100年を迎えた美術図書出版の求龍堂が、これまでにない独自の視点で纏めた、新たなる仏像写真集を発信する。

 運慶作あるいは運慶工房によるものと考えられる作品群、そして父・康慶、息子・康弁の作も含めた97点を掲載している。親子の感性と個性の相違や共鳴が照らされ、運慶を軸とする当時の仏教美術の力を堪能できる。

 本書は、長年、国内外の仏教美術撮影を多く手掛けてきた六田知弘による最新写真集。本書では、モノクロームの3色印刷を主に展開し、その狭間に色刷りを挟み込んでいる。運慶が追求した祈りの世界を究極まで追求する、という今回のプロジェクトで選んだモノクロームの深く豊かな階調は、運慶仏が持つ深い精神性と際だった造形感覚を浮かび上がらせる。

 また、表紙から始まり随所に掲載した部分拡大からは、表情の深みや動きの緊張感が驚くほど伝わり、そうした部分に込められた濃厚なエネルギーが凝縮され、一体の像を成立させていることが伝わってくる。

 デザインは六田知弘と共に多くの写真集をつくってきた人気デザイナー、シルシの上田英司氏が担当。重量感のある運慶仏群を、あえて並製のタイトで柔らかな本に纏め、装幀にも仏像ではなく足を選ぶなど、斬新でスタイリッシュな、新たな運慶の世界を表現した。

 印刷は写真集印刷を得意とする東京印書館が担う。プリンティングディレクターの高栁昇氏が全ての印刷設計を整え、本刷りを最高レベルに引き上げている。モノクロトリプルトーンでの美しい墨色の表現世界を堪能しよう。

商品情報

『運慶 六田知弘写真集』
発売日:2023年10月3日(火)
定価:5,940円(税込)
発行:株式会社求龍堂
主な仕様:並製本 A4変型 160頁(図版97点)
文章:六田知弘、コラム:瀬谷貴之(神奈川県立金沢文庫 主任学芸員)

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