『世界で一番美しい元素図鑑』ベストセラー著者の最新作は「エンジン」? 内燃機関への偏愛が爆発

 世界的ベストセラー『世界で一番美しい元素図鑑』で、だれも見たことのない美しい写真とユーモアたっぷりの語り口をあやつり、元素の世界を探訪したセオドア・グレイ。彼の新作『世界で一番美しいエンジン図鑑』(創元社)が9月13日に刊行された。

 「しくみ」を偏愛する著者の新しいテーマは「エンジン」。蒸気機関、ガソリンエンジンなどの内燃機関、電気モーターなど、数多くの動力源を著者独自の視点で解説し、機械への愛を爆発させる。

 私たちが「エンジン」にどれほど依存しているか、考えたことはあるだろうか。1人の人間が1日に使う動力は、平均すると馬12頭が1日24時間×7日間働き続けるのと同じだけ(電力に換算すると約10キロワット)。どんなエンジンも、何らかのエネルギー源(電気、太陽光、ガソリン、天然ガスなど)からもたらされたエネルギーを力強い運動に変換することに使われる。エンジンにはさまざまな種類がありますが、どれもすべて魅力いっぱい。本書ではそんなエンジンの内部を深く観察して仕組みを学び、その外側や周囲に目を向けて、エンジンがどれほど世界を変えたかを学んでいく。

■監修者序文より
  本書は「エンジン」について書いています。エンジンという言葉を聞くと私たちはガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を想像してしまいます。もちろん、本書でもそれらの内燃機関(発動機とも呼びます)も取り上げています。しかし、本書で「エンジン」という言葉は、もっと広い範囲を表しています。本書での「エンジン」の意味するところを何とか日本語にすると「動力源」です。専門用語では「原動機」と呼んでいます。つまり、本書の「エンジン」は、何かを動かすための動力を発生する機械すべてを表しています。

(中略)

 本書の著者であるグレイさんは、しくみを知るために、すぐに機械を分解して中身を観察します。実は、これがなかなかできないのです。開け閉めするようになっていない蓋やケースをきれいに外すのはかなり難しいのです。それを壊さずに開けてゆくのです。しかも、しくみがわかるように段階的に分解して、きれいな写真で示してくれています。しくみの説明はイラストで見ることが多いのですが、実際の写真で見ることができます。これはメカ好きにはたまらないと思います。

 本書では、動力の源となるすべての「エンジン」の原理やしくみだけでなく、さらに、それらを使った機械のしくみも説明されています。数多くのきれいな写真と著者の経験に基づく楽しい解説をぜひ楽しんでください。解説には一癖あるかもしれませんが。

(日本語版監修者 森本雅之)

■著者略歴
[著]セオドア・グレイ
カリフォルニア大学バークレー校の大学院を中退後、スティーヴン・ウルフラムとともにウルフラム・リサーチを創業。「ポピュラー・サイエンス」誌のコラムなどでサイエンスライターとしても活躍する。元素蒐集に熱中し、周期表テーブルで2002年にイグノーベル賞を受賞。2010年にウルフラムを退職し、アプリの制作会社を立ち上げ、共同創業者兼チーフ・クリエイティブ・オフィサーとして活動している。主な著書に『世界で一番美しい元素図鑑』『世界で一番美しい分子図鑑』『世界で一番美しい化学反応図鑑』『世界で一番美しい「もの」のしくみ図鑑』(以上創元社)などがある。

[写真]ニック・マン
写真家。黒をバックにした美しい写真の撮影を得意とする。『世界で一番美しい元素図鑑』シリーズの写真で知られる。大手自動車メーカーで品質管理部門に勤務した経歴をもつ。

[監修]森本 雅之(モリモト マサユキ)
元東海大学教授。工学博士、電気学会フェロー。三菱重工業にて産業機械や電動車両などの研究開発に従事したほか、電気学会にて論文誌編集長・副部門長、自動車技術会の英文論文誌アソシエイトエディター、技術士試験委員、電気主任技術者試験委員などを歴任。国土交通省、防衛省、NEDOなどの研究審査評価委員も務める。主な著書に『モーター、マジわからんと思ったときに読む本』(オーム社)、『マンガでわかるモーター』(オーム社)、『交流のしくみ』(講談社ブルーバックス)、『電気自動車』(森北出版)、『入門インバータ工学』(森北出版)などがある。

[訳]武井 摩利(タケイ マリ)
翻訳家。東京大学教養学部教養学科卒業。主な訳書にN・スマート編『ビジュアル版世界宗教地図』(東洋書林)、B・レイヴァリ『船の歴史文化図鑑』(共訳、悠書館)、R・カプシチンスキ『黒檀』(共訳、河出書房新社)、T・グレイ『世界で一番美しい元素図鑑』シリーズ、J・ラーセン『微隕石探索図鑑』(以上創元社)などがある。

 

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