【推しの子】はなぜ“カッコつき”なのか? タイトルに隠された最大の謎と、楽しみな伏線回収
※本稿は『【推しの子】』のネタバレや考察を含みます。原作未読の方はご注意ください。
アニメが好評放送中の『【推しの子】』。一見してビジュアルがにぎやかでキャッチーな作品だが、完璧なアイドル・星野アイを殺害した人物は誰なのか、なぜ“推しているアイドルの子ども”への転生が起こったのか、そして主人公・アクアはどのように真実に辿り着き、どのように復讐を遂げるのか、それとも……と、気になる謎が多いミステリーでもある。
そんななかで、アニメからのファンも含めて議論が続いているのがタイトルにつけられている【】(隅付きカッコ)の意味だ。「推している子(アイドル)」と「推し(ているアイドル)の子ども」というダブルミーニングであることから、含みのある言葉だと強調する意味で使われている……という解釈は間違っていなさそうだが、どうやらそれだけではないらしい。
TSUTAYA公式サイトに掲載されているインタビュー「『【推しの子】』タイトルに付けられた【】の意味とは? 1巻は伏線だらけ!!【TSUTAYAの名物企画人“仕掛け番長”のススメ】」にて、原作者の赤坂アカが「意図的に二重にしていて、作中の演出で使用するプランはあります。……くらいの回答でお願いします!」と発言。コミックス1巻の段階で、キャラクターに対する「未来視点のインタビュー」が描かれ、その内容が現在進行中の「映画編」で見事に重なりつつあることを考えても、物語は緻密に設計されており、原作者の「意図的」という言葉は説得力がある。
上記のインタビューでも言及されているが、墨付きカッコは作中でも使用された例がある。原作42話で、元天才子役・有馬かなの怪演を見た「劇団ララライ」の代表・金田一敏郎が、「アレとどう戦うか/必死になって考えちまうもんなんだよ/【役者】なら」と、俳優の性(さが)について呟いたシーンがそうだ。
また、前述の「未来視点のインタビュー」について、連載時には見られなかったものだが、単行本では「インタビュー(1)【アイドル】編」「インタビュー(2)【マネージャー編】」など、隅付き括弧が入ったタイトルが追記されている。
【役者】【アイドル】【マネージャー】【ドルオタ】【映画監督】……と、隅付きッコが使われたケースを並べてみると、立場や職業を示す言葉が括られている。「推しの子」のようにそれぞれに二重の意味が付加されていることも考えられるが、第一話の冒頭にわざわざ「この物語はフィクションである」と書かれていることを思い出すと、「役柄」を示したものにも思えてくる。「推しの子」も含め、墨付きカッコで括られたすべてが作中で演じられたもので、作品世界でもフィクションだったとしたら……という想像も広がってしまう。
いずれにしても、赤坂氏が「これ以上詳細をお話しすると勘のいい読者の方にネタバレしてしまう恐れがあるので、ここまででお願いします(笑)」と濁したように、真相がわかったときには膝を打つようなカタルシス、納得感が得られるに違いない。アニメの放送は残すところあとわずかだが、原作で考察を楽しみながら、第二期を待つのもよさそうだ。