“AIグラビア“写真集を集英社が発売  実在しない“美少女”は今後雑誌の「顔」になる?

 AIが人間の仕事を奪うのではないか。そうした懸念は数年前から存在するが、非常に画期的な事例が生まれることになりそうだ。大手出版社の集英社は5月29日、AI生成画像を使ったグラビア写真集『生まれたて。』を発売した。電子書籍で499円。モデルの名前は「さつきあい」だが、AIが創り出した実在しない“妹系美少女”だ。同社の週刊誌「週刊プレイボーイ」編集部が画像生成をして生み出したという。

 既にAIで写真と見まがうようなリアルな画像生成はTwitterなどで盛んに行われているが、今回、出版社がその技術を採用するということは大きな事件である。読者の評判次第では今後、第2弾、第3弾もあり得るだろうし、他社も追従する可能性も高い。

 また、「週刊プレイボーイ」編集部がAIを起用したことも驚きだ。もしかすると、雑誌のグラビアにもAIが登場するのではないか。それはもちろん正式に発表されたわけでもないし、あくまでも憶測に過ぎない。しかし、その予兆を感じずにはいられないのである。

 グラビアは言うまでもなく雑誌の顔である。売れ行きに大きく左右する要素で、青年向け雑誌には欠かせない存在だ。女性向けの雑誌と言えばジャニーズ系が鉄板であり、男性向けであればAKB系が長らく起用され、近年では声優やコスプレイヤーなどが登場し、芸能事務所の間でも限られた枠をめぐって競争が行われてきた。各社がグラビアでミスコンを行うこともあり、芸能人、タレントの新人発掘の場としても機能してきた。

 こうした競争の中にAIが参入してくるとしたら、どうだろうか。AIは人間に比べて、様々な点でメリットがあるのは間違いない。まず、圧倒的に費用が安いことだ。アイドルを起用する場合、事務所、スタイリスト、写真家などにギャラが発生し、もちろんスタジオ代や休憩時間の食事代もかかるし、編集者も長時間拘束されることになるが、こうした費用がほぼ発生しなくなる。

 プロのAIクリエイターなる仕事が今後生まれる可能性はあるが、それでも多数の人員が関わる通常のグラビア撮影よりは格段にコストカットになる。ましてや社内で画像生成できるのであれば、大幅なコストカットができる。AIで人気が取れるのであれば、出版社にとってはいいことしかないのだ。

 AIに固定ファンなんてつくのか、という意見もあるだろう。しかし、特定の“推し”がいないという読者は実際に存在する。かわいい女の子、イケメンの男の子の画像が見られるなら、別に誰でもいいという人は一定数存在するのだ。ネットで広がっているAIによるイラストも、そうした需要を取り込んでいるといえる。また、アンケートで人気が出たAIグラビアの顔を使って、衣装などを適宜変更して掲載することもできる。こうなれば100%AIによるグラビアアイドルを誕生させることも可能になる。

 これは読者にとってもメリットは案外大きい。何しろ、スキャンダルが発生しないのである。SNS上でも、AIのメリットとして挙げる人が多かった。アイドルの熱愛報道がスクープされ、深刻なファン離れやバッシングのネタになるのは日常茶飯事だが、AIなら“裏切られた”という問題と無縁なのだ。

 今後、報道、出版の分野でAIが担う仕事はますます増加するのは確実である。確実に、多くの記者やライターの仕事はなくなると想定され、とくにプレスリリースをもとにした記事の作成であればAIが担うと考えられる。こうした動きがいよいよ、グラビアアイドルの業界にも波及しつつあるようだ。果たして、AIはグラビアアイドルの仕事を奪うのだろうか。今後の動向に注目していきたい。

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