【漫画】ルールを破ることで人を助けられるとしたら……SNS漫画『怪獣を倒す話』が考えさせる“正義”のあり方

着想は『ONE PIECE』の名シーンから

――『怪獣を倒す話』を描いたキッカケを教えてください。

ZERO8:現在の担当さんと初めてネーム作りの段階から打ち合わせをした完成させたのが本作です。当時は「カッコイイ話を描きたい」と思っていて、そんな中で頭に浮かんだのが“毒”でした。次に「毒をカッコ良くさせるにはどうしよう」と考えた時、「毒を持った怪獣を倒せたらカッコイイかも」と思って怪獣が誕生しました。

 ちなみに話の着想は尾田栄一郎先生の『ONE PIECE』(集英社)から拝借しています。白ひげ海賊団と海軍の全面戦争を描いた“マリンフォード頂上戦争編”の中で、「正義のためなら犠牲は仕方ない」というヒーロー(海軍)側の言葉に刺激され、今回のストーリーに取り入れてみました。

――作画のクオリティがとても高く、かなりの時間を要したのかなと感じました。

ZERO8:作画には約3ヶ月ほど時間を費やしました。「時間配分が自分の中の課題だな」と思っています(笑)。今回の作品は「怪獣がいる世界」なので、怪獣はもちろん、特に背景に時間をかけました。その中でも「冒頭シーンで掴みを入れたいな」と思い、1~2P目は作画には1~2日ほど時間かけました。

――背景もそうですが、討伐隊の衣装や武器などにもかなりこだわっている印象でした。

ZERO8:松本直也先生の『怪獣8号』(集英社)を参考にして、討伐隊の衣装を描きました。当初、「武器として銃を持たせたい」と考えていましたが、『怪獣8号』でも銃を使っていることに気づき、被ってしまうため“怪獣を倒せそうな大剣”に持ち替えました。

ヒーローが名もなき“少年”の理由

――討伐隊の「ライア」と、「少年」が軸になっていますが、この二人はデザインから性格まで、しっかりキャラクターが立っていますね。

ZERO8:最初に「毒が好きな少年を描きたい」と思い、16歳ほどの男の子を描きました。その後、「その男の子が毒を持ち逃した場合、誰なら追いかけるだろう?」と考え、「責任感のある人なら追いかけるだろう」ということで責任感の強いライアというキャラが誕生しました。

――後々になって少年の年齢は下げたということですか?

ZERO8:はい。「毒が好き」という理由だけでは、怪獣を倒す動機にはつながらないと感じました。ですので、少年の年齢を13歳くらいに下げ、“両親を殺された”という過去も加えました。

――ちなみに少年に名前を設定しなかった理由は?

ZERO8:名前を出すか出さないか問題は担当さんとも話し合いになりました。最初は「入れたほうがいい」と言われて名前を出していたのですが、どうしても「入れたくないな」と思ったので、名前は「少年」のままにしました。

――なぜ入れたくなかったのですか?

ZERO8:シンプルに「ライアと少年の間には名前を呼び合う関係性は無くていいんじゃないかな」と思ったからです。少年もライアさんのことをずっと「お姉さん」としか呼んでないのがその証拠かなと思います!

正義のためなら犠牲は仕方ない?

――様々な角度から登場人物が描かれており、感情の奥行きが感じられました。

ZERO8:難しい感情を描かなければいけない時など、表情1つだけで表現できるほど絵が得意ではありません。ですので、俯瞰やあおりを混ぜることで、「焦りや怒り、悲しみなどを引き立たせられるかな」と試行錯誤しながら使用しました。

――「正義のためなら犠牲は仕方ない」という言葉から始まった物語ということですが、明確な正解は示されていませんね。

ZERO8:本当に難しい問題ですよね。本作では、討伐隊の言う“多少の犠牲”に悪意はなく正義です。一方、少年が言う「犠牲を無くす」もまた正義。きっと正義と正義のぶつかりあいの中に、正しい答えというものはないんでしょう。だからこそ、読者さんには「ライアのように自分が”その正義”に違和感を持つことがあれば、自分が思う正義をぜひ見つけてください」ということが伝われば良いなと思っています。

――最後に今後の目標など教えてください!

ZERO8:9月に行われる『マガジン新人賞』に向け、新しい作品を2作制作する予定です。今はまだ方向性や自分の得意分野を模索中ですが、担当さんと一緒に有名な漫画家になり、みなさんの明日を生きるための活力となれるような頑張ります!

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