ホラー漫画家・洋介犬が語る、恐怖の体験談「作品を描くと現実に同じような事件が起きるのです」

ホラー漫画家は深層心理を先読みする

――新興宗教の団体もホラー漫画にしばし登場しますね。洋介犬先生も『悪魔の論破』でそうした団体を描いていますが、これも今はもっとも扱いが難しいテーマだと思います。

洋介犬:2022年の初めくらいから『悪魔の論破』の連載企画を立ち上げるため、ネーム作業をスタートさせました。主人公はカルト教団のお飾りの神様という設定でしたが、その連載企画の進行中にカルト問題が社会問題化しました。

――正直、カルト問題ってしばらく報じられていなかったニュースですよね。あまりにタイミングがぴったりで、出来すぎなんじゃないかと思うほどです。

洋介犬:さすがにニュースがカルト問題一色になって、これは発表したら確実に「後追いでやっただろう」と言われるなと思いました。ところが、「やわらかスピリッツ」編集部に「これはこのままやっていいんですか?」と聞いたところ、「今こそやるべき内容だ」と言われたんです。掲載を決めてくれた編集部には凄く感謝しています。

――ただ、こうも漫画の内容と実際の出来事が似通ってしまうのはなぜなのでしょうか。洋介犬先生が預言者なのか、それともホラー漫画家特有の何かがあるのでしょうか。

洋介犬:ホラー漫画って、基本的に人の深層心理を先読みして作るんですよ。プロットを考えるときは、夜に道を歩いていてわき道から人が出てきたらどうしよう……とか、シミュレーションをしながら話を練りますからね。だから、社会問題を扱うと、なおさら予言めいた内容になってしまう可能性もあるのです。

――漫画の起源は風刺であり、時事ネタを描くものですが、ホラー漫画は非日常的でありながら風刺の要素が強いですよね。洋介犬先生の『外れたみんなの頭のネジ』は時事ネタがたくさん含まれています。

洋介犬:僕の場合、風刺性を積極的に取り入れていますからね。『エンドウさん』はコメンテーターが主人公ですし。ニュースの先のことを常に考えているので、事件の展開が、漫画の内容と似通ってしまう可能性も高いのかなと考えています。後出しでも、様々な事件と偶然に一致することも多いのですが、とにかく修正をしなければいけないので、まったくありがたくはないんですよね。

ホラー漫画家は冷静だが、しかし――

 筆者はこれまで何人もホラー漫画家にインタビューをしてきて、常に感じることがある。ホラー漫画家は、作風とは似ても似つかないほど真面目で、常識人が多いのだ(失礼)。それはつまり、超常現象や怪奇現象を冷静に見ているし、社会問題についても客観的に捉えている。今回の洋介犬の発言からもよくわかるだろう。

 しかし、洋介犬の体験談のなかにはあまりにできすぎな事態も多く、実は、様々な事情で今回の記事では紹介できない恐ろしい事例もある。本当に偶然の産物なのだろうか? いや、やはり、漫画の内容が何か霊的なものを呼び寄せてしまうのか――? 真相は謎に包まれている。

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