森薫、漫画『シャーリー・メディスン』未完成原稿掲載でお詫び コメントからわかる読者への思いとプロ意識の高さ
4月20日発売の漫画雑誌「青騎士」13B号掲載の森薫の漫画『シャーリー・メディスン』について、原稿が未完成のままで掲載されていることを編集部が発表した。また、森薫のお詫びのコメントも併せて発表された。
『シャーリー・メディスン』はメイドを題材にした漫画を数多く手掛ける森薫の原点といえる作品で、「コミックビームFellows!」に初掲載。その後、「ハルタ」「青騎士」と掲載誌を変えながら不定期に発表されている。
森薫は、「今回の原稿が一部未完成の状態で載ることになってしまいましたことをお詫びします。読まれた方はがっかりされたかもしれません。久々のシャーリーのお話を楽しみにしてくださっていた方にも申し訳ない気持ちです」と謝罪。編集部のスケジュール調整などのサポートがあったことも報告し、「青騎士の他の作家さんたちに対しても失礼な事ですし、責任を感じています」とコメントした。
今回、一部未完成となった理由として森薫は体の不調を挙げている。2022年の年末あたりから指先にアレルギー性皮膚炎が出た上に、石灰沈着性関節炎を発症して満足にペンが持てない状況が続き、さらに今年になってから可逆性脳血管収縮症候群を発症したという。ところが、病院では「すべて原因は不明で症状を緩和させながら自然治癒を待つほかない」と診断を受けたと報告している。
さらに、人間ドックを受けたところ、子宮筋腫が大きくなっていることもわかったという。子宮筋腫は良性腫瘍の一種で以前から確認していたといい、医師からは問題はないと診断されていた。この腫瘍が問題を起こしているのかどうかは不明らしいが、森薫は今後のことも考えて摘出手術を決めたという。手術については、「誌面上ではそれほどお休みしなくても大丈夫かもしれません。とはいえ開腹手術ではありますし、手術後の体調がどうなるか今は分からないことが多いため、様子を見ながら連載に復帰したいと思っています」とコメントした。
森薫はプロ意識が極めて高い漫画家であることは誰もが知る通りだ。漫画そのものが面白いのは言うまでもないのだが、緻密に描き込まれた作画、そして単行本のアンケートハガキにまで手間をかけて芸術作品のように仕上げる。記者は『乙嫁語り』を初めて購入した際は、このアンケートハガキはもったいなくて使いたくないなあ… と思ったものだ(普通の官製ハガキを使っても問題ないようだが)し、あとがき漫画を読んでも徹底的に資料を集めてから創作に臨んでいることがうかがえる。
さて、森薫は決して漫画制作にストレスを感じているわけではないと言い、コメントを読めば、むしろ描きたいものが溢れている状態であることがわかる。最後はこのように綴られている。
「体調不良で描きたいだけ描けないというのはもどかしいものです。万全の状態で楽しく描けるように、全力で回復に励むつもりです。連載を楽しみに読んで下っている方には、どうかあまり心配なさらず、少しの間お待ち頂きたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします」
なお、編集部は手術が無事に終わったのち、回復を待って、完成した『シャーリー・メディスン』をWEBページ「青騎士note」で公開すると発表した。
今回のコメントを受けて、Twitterでは「森薫」「森薫先生」がトレンド入り。多くのファンや漫画家がお見舞いの言葉を寄せている。森薫の作品を多くのファンが楽しみにしている様子がわかる。4月22日からは『大乙嫁語り展』の巡回展が神奈川県横浜市の「あーすぷらざ」で開催されるなど、様々な面で注目されている森薫。記者もファンの一人として、手術の成功を心から祈念している。