【LINEマンガ】大人気BL作品『ちりぢりゆくの』作者・まゆハル「心と心をぶつける王道ラブコメという感覚で描いている」

全体のバランス感を意識し繊細に決めているキャラデザ

ーー主要キャラクターの造形についても聞かせてください。シオと相馬、同級生で秘密を抱えたなっさん、シオの両親まで、人気キャラクターが多いですが、どんなところからイメージを膨らませましたか?

 シオに関しては、キャラ設定を含めて特に色気を出すようにしています。あとはいかに「アホかわいい」と言ってもらえるか、という部分も細かなコマで出るようにしてます。相馬についてはシオのキャラを超えず、でも“受けの為の攻め”にならないように気をつけています。最初はもう少し地味目なビジュアルでしたが、いまのシオとあまりお似合いではなかったので16歳らしからぬ造形になりました(笑)。

 なっさんに関して、最初のキャラクターデザインでは「THEショタ!」でした。ただ話の内容から私の力では魅力を処理しきれないと思い、現在の造形になりました。シオの両親は、父親は「現実的な発言も包容力があるように聞こえるビジュアル」にしたくて「デカプニ」に。母親は未公開の設定があるのでこの発言がすべてではないですが、「全地球人に愛される、地球人と結婚した宇宙人とは?」を突き詰めた結果がこの造形です。

ーーシオが散っている描写が最初から読者には「グロい」ものには見えず、「気持ち悪い」と彼を傷つける人々と読者が“共犯”にならないのも面白い点だと思いました。

 そうですね。これにはいくつか理由があり、「散ること」が気持ち悪いと思われても、シオというキャラクターが「気持ち悪い」になってほしくなかったこと。また、シオが男子から嫌われる理由は「散ること」以外に彼の振る舞いも大きな理由にしたかったんです。そして、相馬はシオが散った姿をキレイだと言っているので、読み手がグロいと思ってしまうとニッチな趣味になってしまう、という考えもありました。

ーーなるほど。「振る舞い」というお話もありましたが、セクシーでぶっとんだコメディ、というところから、シオの成長も含めて切実なエピソードも印象に残ります。この辺りのバランスについてはいかがでしょう?

 もともと切ない系の作品予定が、キャラ変更によってコメディ色が強い話になってしまったので、後半になるにつれて「散る設定」が活きるエピソードになっています。なので、正直な話、「バランスを考えてバッチリ!」と意識したわけではなくて……(汗)。

BL作品の魅力は感情ではなく心と心をぶつけているところ

ーー自然といいバランスになっていると。性自認の問題に限らず、自分が生まれ持ったものに悩む人たちにとって勇気がもらえるエピソードも多いと思います。BLというジャンルだからこそ描けることについてどう思われますか。

 私個人としてはBLというファンタジーを描いている以上、読み手に訴える社会的テーマという話はおこがましくてできませんが、『ちりぢりゆくの』の読後にそう感じていただけるのであれば、大変うれしいことです。BLについて個人的に思うことは、「感情ではなく心と心をぶつけている」ということでしょうか。はなから脳の作りが同じなので、「感情」よりももっと相手との距離が近い。私のなかではそのような感覚です。

ーーこれまで公開されている16話で一区切りとなり、本日更新の17話から新章突入ということで、単純に続きが気になります。今後について、少しだけヒントをもらえますか。

 シオの体質においての身体の交わり(性行為)は、「どうにもできないもの」です。科学の力ではどうにもできない体質のなか、どう性行為まで持っていくか……という話ではないことはハッキリと言えます。それは読み手としては見たいところではあると思いますが、現段階では夢オチのような展開になってしまうのでは?と。ただ、二人の関係が後退することはないので、そこは安心して読んでください。もちろん、ギリギリのエロは描いていきたいと思います!

 言い換えると、シオの両親の言う「体質の本質」という言葉は、親としての子に対する最適解の考えを提示したに過ぎず、当事者をどうにかできることでも、『ちりぢりゆくの』の着地点でもありません。なのでその言葉を受け取ったシオが今後、どう相手の愛に応えるか、彼なりの愛し方を見つけていくことを描いていく予定です。

ーー楽しみにしています。最後に、今後に向けて意気込みをお願いします!

 もともと16話で完結する予定だったのが、『ちりぢりゆくの』を愛してくれている読者の皆様と、熱心な担当さんのおかげで連載継続となっている作品です。せっかくいただいた機会なので、より丁寧に感情を描いていきたいと思いますし、ギリギリの色気にも挑戦していきたいです。当初は「愛してもらえるキャクター」を主に創作していたので、何よりもキャクターを愛でてもらえることがうれしいです。楽しく愛で溢れた可愛い2人を今後ともよろしくお願いします。

 また、これから読んでいただける方の中には、まだまだ縦読みマンガが苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが、読みやすいように創意工夫していますので大丈夫だと思います! 「やれないBL」という「特殊設定」ですが、基本は王道ラブコメとなっております。1話から中盤のエグい温度差をぜひ堪能していただきたいですね。

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