【漫画】電車内で電話する迷惑客にフランス人女子高生が取った行動とは? 痛快なSNS漫画が話題
――本作は『クロエの流儀』の第1話「マナーモード」となります。2015年の作品となりますが、こちらを改めてTwitterに上げようと思った理由を教えてください。
今井大輔(以下、今井):漫画がアプリで読まれるようになってから、古い/新しいという垣根がなくなっています。読者が新しいと思えば「新作」になるので、過去作もたまにあげようと本作も投稿しました。
実はこの第1話、僕自身の経験がベースなんですよ。混んでいる車内で男性のスマホがマナーモードになっておらず電話が鳴って話して、しばらくしたらまた鳴らして話して。それを見て「マナーモードって知ってますか?」と伝えたら、マナーモードにして次の駅で降りて行きました(笑)。
――そうだったんですね。それを漫画に落とし込んだと。
今井:そうなんです。「週刊漫画ゴラク」の編集さんに話したら「それ面白いから漫画にしましょう」と。その方には随分お世話になって、週刊誌なのに「毎月8ページでもいいから連載しないか」と誘っていただきました。
月に8ページだと単純に描くだけでは埋もれていくな、と直感的に理解していたので、なるべくインパクトを残そうと意識して作っていたのを覚えています。最初は「不良少女が大人に噛みついていく話がいいのでは?」というアイデアもありましたが、最終的にクロエというキャラクターになりました。
――その後「日本社会のおかしなところを切る」という方向性はどのように決定したのでしょう。
今井:大人になると「物事にふたつ以上の視点がある」ということを理解しますが、あえて一方を正しいと主張することで、強い共感と強い反発が出てくる。それによって「俺はこう思う!」と意見を言いたい人がたくさん出て、飲み会の席などでのネタになることを目標にしていましたね。その変化球的な作り方に比べ、今描いている『ビターコネクト』は直球です。
――また背景のない画柄が、どこか水墨画のような「和」なイメージを想起させました。日本に影響を受けたクロエともリンクするというか。
今井:本作の前に連載していた『ヒル』は単行本5巻分の半分ほど、アシスタントさんなしで描いていたのですが、ひとり試行錯誤するなかで自分が作りたい画面が「白黒はっきりしたもの」だと気付いたんです。
それから本作は「絵というよりも文字を読んでもらう漫画になる」と感じていました。でも密度の高い絵に文字を置くと見てるだけで疲れてしまうんですよ。ちょうど描き始めたのが、ネットやスマホで漫画が読まれ始めた頃でしたし、小さい画面で読んでもストレスがないように背景をなるべく書かないようにしました。
――本作に限らず、登場人物の心象描写が巧みです。何か影響などはありますか。
今井:もともと読書は苦手だったのですが、小学校2年生くらいの時に授業で詩を習ったのが転機でした。短い文章で触れやすかったし、好きな言葉を並べて表現することも自分に合っていたんですね。
それから「人間」をテーマにした作品を宿題として提出したら褒められて、先生が授業で扱ってくれたんですよ。先生に言葉に対しての得意意識と興味を植え付けてもらったことで、自分で詩を書くようになったんです。その積み重ねが小さい心の動きを言葉で捉える訓練になった気がします。
――では、なぜ詩を表現ツールとして選択しなかったのでしょう。
今井:喜怒哀楽などの名前が付いていない感情を表現したいので、このフォーマットを選んでいるんです。いつも「人がこういう時にこういう動きをするのは、こういうことを考えているからだろうな」と感じたことをコマの連続で描けるのが僕にとって漫画でした。
――今後、描きたい作品などがあれば教えてください。
今井:新人の頃から変わらず「切ない物語を描きたい」と思っています。そのために感情をしっかり描くということを大事にしてきました。逆に僕は描きたいテーマが全然ないんですよ。どんな物語でも、そこに人が登場すれば絶対に感情が出てくるはずなので。