目黒考二が開拓し、北上次郎が花開かせた書評文化ーー「本の雑誌」創刊者の功績を振り返る

 その発端を、「本の雑誌」発行人として売ってくれる書店を開拓した目黒考二が創り、精力的な書評活動によって北上次郎が切り開いたのだと言えるだろう。そうした行為は、結果として自分自身を書評家として飯が食える状態へと持っていったが、そうなれたのは書く書評が大勢に支持されたからだ。椎名誠らが面白がって読んだリポートの時代から書き続けていた北上次郎の、面白い本の面白いところを面白いと語る書評の面白さに、もっともっと語って欲しいと依頼が絶えず続いたのだろう。

 2019年に刊行された『書評稼業四十年』には、北上次郎として書評を書くにあたってどのようなスタンスで臨んでいたかが綴られている。つまらない本、退屈な本はとりあげず、自分が傑作と思ったものを傑作として紹介することにしている。仮に批判的なことが書いてあっても、それは期待の表れだ、等々。だからといって、作家に媚びているということはない。むしろ作家とは会いたくない、会ってしまうと批判を書きにくくなってしまうと書いている。正直な書評を書きたいという思いが感じられる。

 もっとも、「大森望がすごいのは批判した作家と平気な顔で会えることだ」とも書いていて、そういった強靱な神経と、真否を明確に判定できる目を持った書評家がいることも否定していない。「若いライターは少しくらい生意気な方がいい」とも。そうした色々なタイプの書評家を、「本の雑誌」を通して発掘し、引っ張り上げて世の中に送り出した。その成果として、「リアルサウンドブック」を始めとした書評サイトがあるのだとしたら、受け継ぐべきはやはり書評という行為を通して、本という表現が盛り上がり広がっていくことだろう。

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