『ぼっち・ざ・ろっく!』作者・はまじあきインタビュー「 ぼっちちゃんの性格は、私自身の投影です(笑)」

はまじあき流の表現手法に迫る

――はまじ先生特有の漫画表現も見逃せません。見どころの一つが、ぼっちちゃんの多彩な変顔です。福笑いのような崩れ顔が秀逸で、何度見ても笑ってしまいます。

はまじ:何も考えずに、手の動くままに描いたらあんな顔ができたんです。自分なりに面白い絵ができたと思ったんですが、瀬古口さんに見せたら、最初は反対されたんですよ。

――なんと!

はまじ:私は載せてほしいと思ったので、ネームの段階では普通の顔にしておいて、原稿ではしっかり変顔で描いてデータを渡し、採用してもらいました(笑)。ギャグ漫画でもあるので、顔芸でも笑わせたいんですよね。

変顔、崩れ顔も名物。最新号の『きららMAX』には、ぼっちちゃんの顔で遊べる福笑いの付録がついた。
バイトを休みために氷風呂に入るぼっちちゃん。せっかくの美少女が……

――はまじ先生は『ちゃお』で少女漫画を描いておられたとのことですが、作中には少女漫画家らしい表現も見受けられます。

はまじ:自分の中では、あまりそんな感じはしないんですよ。というのも、『ちゃお』にいた頃が場違いだったと思っていました。なにしろ、少女漫画雑誌で萌え系の作品を描いていましたからね(笑)。トーンの貼り方などは、少女漫画の影響を受けているかもしれませんが。

初めてのライブシーン。「ぼっちちゃんの懸命な姿を見ていただくために、敢えて擬音を入れませんでした」とのこと。
柔らかいトーンの使い方など、少女漫画家だったはまじあきらしさが感じられるシーンも多数ある。

実体験が漫画に生きている

――作品を描き始める前は、下北沢やライブハウスに取材されたのでしょうか。

はまじ:ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジアン・カンフー・ジェネレーション)など自分が好きなバンドマンが、下北沢から育ったことは知っていました。ただ、ぜんぜん馴染みがなくて、この漫画を描くまで行ったことすらなかったんですよ。漫画を描く前に足を運んだのですが、そのときにふらっと入ったお店の店員さんがなんだかすごく怖くて……(笑)。その体験は第2話に反映しています。

――下北沢のお店って、慣れるまでは一見さんには入りにくい雰囲気がありますよね。

はまじ:私はライブハイスの基本や文化を知らなかったんですよ。初めて1人で下北沢のライブハウスに行った時も、「どのバンドを見に来ましたか?」と聞かれたんです。「特にないです」と言ったら、スタッフさんに怪訝な顔をされてしまって(笑)。

――こうしたはまじ先生の経験が、作中に挟まれる豆知識コーナーに生かされているように思います。

はまじ:私も初心者の状態で漫画の企画を立てたので、連載をしながら様々なことを学ばせていただいています。豆知識のコーナーは、自分から勉強したり、取材したことをもとに描いている感じです。

ギタ男くんの説明コーナー。はまじあきは、「私が初心者だったせいで、序盤の内容がマニアックになりすぎなりませんでした。そのおかげで、ライブや楽器に詳しくない読者の方も読み進めやすいのかなと思っています」と話す。

漫画のこれからの展望とメッセージ

――最初はなかなか前に踏み出せなかったぼっちちゃんですが、学園祭の催しやバンドの大会に出るなどして、バンドメンバーとの絆も深まってきました。回を重ねるごとにギタリストとして成長しています。

はまじ:描き始めた頃は陰キャネタのギャグが中心だったのですが、幸いにも支持をいただき、話が続くことになりました。試行錯誤した結果、ストーリー漫画的な成長物語になりました。私自身、結束バンドやキャラクターたちの成長を楽しみにしながら、漫画を描いています。

――今後の作品の展開について構想はありますか。

はまじ:そうですね……変わらずぼっちちゃんの陰キャや変顔も描きつつ、音楽業界のネタや、キャラクターの進学による関係性の変化や成長も描いて、盛り上げていきたいと思っています。

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

はまじ:アニメは終わってしまいましたが、アニメのパワーに負けずに漫画も盛り上げていきます。アニメは結構マイルドな感じの描写がされているのですが、尖った感じのツッコミや、殺伐とした感じのギャグも見たい方は、ぜひ漫画も読んでくださいね(笑)。これからも応援よろしくお願いいたします!

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