ポケモン最新作『スカーレット・バイオレット』は出版業界も席巻? 現代に「攻略本」が売れる理由

 「ポケットモンスター」シリーズの最新作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』が本日11月18日、世界同時配信された。事前予約数が過去最高を記録するなど、世界中のゲームファンが注目する一作となっており、合わせて、12月16日発売の公式ガイドブック/攻略本『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット 公式ガイドブック 完全ストーリー攻略』(オーバーラップ)にも予約が殺到している。本日発売の最速攻略ガイド『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット 宝探し冒険ガイド』(小学館)も、各種ネット書店のランキングで上位に食い込んでおり、ゲーム業界だけでなく、出版業界も席巻する勢いだ。

 かつては出版の1ジャンルとして存在感のあった「ゲーム攻略本/ガイドブック」だが、主にインターネットの普及、ネット掲示板や「攻略サイト/攻略wiki」、「攻略動画」などの隆盛により、不可逆的に見える苦境に立たされてきた。ゲームの攻略情報が詳細かつスピーディに、無料で共有されるのが当たり前になったなかで、当然、「本」というメディアの優位性は下がってきたが、それでも、2020年に異例の売り上げを記録した『あつまれ どうぶつの森 ザ・コンプリートガイド』(KADOKAWA)や『あつまれどうぶつの森 完全攻略本+超カタログ』(徳間書店)、そして今回の『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』関連本のように、ヒット作は生まれている。

 ひとつのポイントは、手元におきたいと思えるアートワークを含む、“攻略サイト”には載らない付加価値のあるコンテンツだろう。『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット 公式ガイドブック 完全ストーリー攻略』の詳細は未発表だが、2019年に同じ座組みで刊行された『ポケットモンスター ソード・シールド 公式ガイドブック 完全ストーリー攻略+ガラル図鑑』を読んでみると、もちろん攻略情報も充実しているが、登場人物の詳細な紹介にファッションカタログ、開発者インタビューや設定資料も掲載されており、公式ならではの読み物としての充実感がある。

 また、「ポケモントレーナーの心得」として初心者にも優しい解説パートがある一方で、ポケモンや「わざ」の辞書として、“やり込み派”もきっちり使える内容だ。個人的には、ストーリー攻略を進める上で、「マップ」はネットより紙の本の方が使いやすく感じる。そもそも、ハマったときのプレイ時間を考えるとゲーム自体がコストパフォーマンスの高い娯楽だが、その世界を徹底的にガイドし、奥深くまで楽しむための情報が図鑑や辞典のように詰まった書籍が、1540円(税込)というのはお値打ちに思える。

 ゲームフリークからすると邪道だということは自覚しているが、実は筆者は、『ポケットモンスター ソード・シールド』自体はプレイしておらず、『公式ガイドブック 完全ストーリー攻略』のみ所有している。クリアまでプレイする時間は取れそうにないが、ストーリーや登場するポケモンの詳細は知りたいーーそんなファンの需要も一定数、ガイドブックや攻略本にはあるのではないだろうか。

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