「邪神ちゃんドロップキック」作者・ユキヲ「僕の漫画家生活にゲームは不可欠」 スマホゲーム全盛時代にレトロゲームで遊ぶ理由

――その気持ち、わかります。とはいえ、僕も子どもの頃は、アーケードそのままと思って買ったら、スーファミ版は不完全な印象で不満でした(笑)。

ユキヲ:そうそう。子どもの視点では、アーケードのほうが本物だと思ってしまうんですよ。でも、大人になった今だと、「スーファミの制約の中、よく頑張った!」と思えますね(笑)。『ザ・キングオブドラゴンズ』は、制約のせいで、かえって曲がアーケード版よりかっこいいんです。対して、こちらの『Mr. Do!』もアーケードの移植なのですが、ほぼ完全に近い形で移植できている例です。アーケードとスーファミの細かな違いを見比べて、開発陣の苦労に思いを馳せるのも、大人ならではの楽しみ方だと思います。

『ザ・キングオブドラゴンズ』は1991年にアーケード版が出たのち、1994年にスーパーファミコンに移植。ユキヲ曰く、「スーファミ版の音は、アーケード版を比べると籠っている感じ。それは制約のせいなんでしょうけれど、僕には逆にかっこよく聴こえるんですよね」とのこと。ソフトは子どもの頃にも持っていたが、後で買い直したという。
『Mr. Do!』は、ピエロを操作して画面の点をとっていくゲーム。ユキヲは「『ディグダグ』と『パックマン』を合わせたようなアクションゲームで、基板も持っています」と話す。1982年に出たアーケード版が、13年後の1995年にスーパーファミコンに移植された。

今の時代にレトロゲームで遊ぶ理由

――ユキヲ先生が考えるレトロゲームの魅力って、何でしょうか。

ユキヲ:シンプルで遊びやすいことが挙げられます。現在のゲームはもちろん凝っていて面白いのですが、システムが複雑で、操作方法を覚えるだけで時間がかかるんですよ。昔のゲームは直感的な操作で遊べるのがポイントです。あと、僕にとっては思い出をもう一度辿れる喜びもあります。昔遊んでいたものを今やったらどう感じるんだろう、という好奇心もありますね。対して、スマホゲームは、今は一本もやっていないんですよ。

――ええっ、そうなんですか?

ユキヲ:スマホゲームはサービスが終わると、遊べなくなってしまう。レトロゲームはゲームソフトが一本あれば遊べるので、安心感があるんですよね。最近のアーケードゲームも、筐体が撤去されたら遊べなくなるパターンが多くて残念です。僕は『プリパラ』や『オトカドール』が大好きで、一時期はめちゃくちゃ遊んでレベルも上げたのに、今ではプレイが難しい。思い出がなくなってしまうようで、悲しいんですよね。

――『邪神ちゃんドロップキック』の連載で多忙なユキヲ先生ですが、ゲームを遊ぶ時間は欠かせないそうですね。どんなタイミングでプレイしているんですか?

ユキヲ:僕は1日のノルマを終わらせたときに、ゲームをやるのが日課です。あと、朝に仕事をする気が起きない気分のときに、やる気を出すために遊ぶ。一種のルーティーンになっていますね。

――ゲームから漫画のインスピレーションを得ることも多そうですね。

ユキヲ:ゲームの一場面からアイディアを思いつくこともあります。例えば、『邪神ちゃんドロップキック』に出てくる“邪神ちゃん会議”の場面は、『ザ・キングオブドラゴンズ』からヒントを得たものです。こういうアイディアが拾えることもあるのが、ゲームの楽しさですね。

――レトロゲームの愛好家が増えている現状を、どう見ていますか。

ユキヲ:レトロゲームは、最近僕みたいなおじさんが当時を懐かしんで集めているのか、プレミアがついて高くなっていますね(笑)。あと、僕個人の話で言えば、コレクションが増えすぎてだんだん置く場所が足りなくなってきました。ソフトはまだ管理がしやすいのですが、僕が集めているゲーム基板は分厚くて場所をめっちゃとるので、部屋の中が占拠されつつあります。

――ユキヲ先生は今後もゲームと縁を切れない生活を送りそうですよね。

ユキヲ:何しろ幼稚園児の頃から遊んでいますから、ここまで来たら、一生遊び続けると思います(笑)。僕はゲームを通じて友達も作ったし、漫画家になるきっかけにもなりました。常に毎日の生活の中にゲームがあったと言っても過言ではない。本当、ゲームには感謝してもしきれないほどです。

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