『ダイヤのA actII』終幕発表で早くも高まる「actⅢ」への期待 魔球も悪役も登場しない野球漫画の魅力
「週刊少年マガジン」で連載中の人気野球漫画『ダイヤのA actII』が、あと2話で最終回を迎えることが発表された。「actⅢ」という言葉が一時、SNSでトレンド入りするなど、早くも続編を期待する声が上がっている。
本作は2006年に連載を開始した『ダイヤのA』の続編で、2015年よりスタート。廃校が決まった地元中学校の仲間たちに後押しされ、高校野球の名門校・青道高校に入学した投手、沢村栄純の奮闘を描いた作品で、『actII』では、二年生の夏、甲子園への活躍が描かれてきた。第一部となる『ダイヤのA』は全47巻、『actII』は既刊31巻で、全71巻の長期連載となった『Dreams』を超え、「週刊少年マガジン」史上、野球漫画として歴代一位の巻数を誇っている。
本作の魅力といえば、作者・寺嶋裕二の高校野球愛が随所に見られる、リアリティのあるストーリーテリングだ。自身が激戦区として知られる香川県出身の高校球児であり、物語は球児たちの日々への優しい眼差しにあふれている。
本作には、優れた能力を持つスター選手は数多く登場するが、問題をすべて解決するような“魔球”は存在せず、これだけの長期連載でまだ「高校二年生の夏」が描かれていることからもわかるとおり、選手たちの成長がゆっくりと、丁寧に描かれる。同時に、野球部を混乱に陥れるようなわかりやすい「悪者」は登場せず、球児たちの爽やかで切実な苦悩と喜びが感じられるのも、本作の特徴だ。
選手が一足飛びに飛躍する、現実を超えた魔球があれば、それだけで作品にインパクトが出るし、「悪役」との対決はカタルシスを生む。そうした要素を取り入れず、地道な練習と、最新の理論や戦術による選手とチームの成長を描き続けることには、覚悟が必要だ。展開の遅さにヤキモキする読者もいるはずだが、野球に対する作者の真摯な姿勢が伝わっているからこそ、これだけのヒット作になったのだろう。
初期からのファンには、「いつの間にか沢村たちよりずいぶん年上になってしまった」という人も多い。『actII』は残すところあと2話、固唾を飲んで見守ってきた彼らの成長を楽しむとともに、やはりその先が描かれる「actⅢ」にも期待したいところだ。