書物と文字の美しさに心惹かれる『カリグラフィーのすべて 西洋装飾写本の伝統と美』に注目

文字を書く時にもっと上手に書けたらいいのになあ……と感じたことはないだろうか? 日本では子どもに習字を習わせたりするが、それに近いのがカリグラフィー。西洋や中東などにおける文字(アルファベット)を美しく見せるための手法だ。

 2022年9月に刊行予定の『カリグラフィーのすべて 西洋装飾写本の伝統と美』(グラフィック社)は、そんなカリグラフィーの歴史と偉大な芸術家、写本に光を当てた貴重な一冊。

 豊富な図版で西洋装飾写本の歴史を紐解きながら、76の歴史に名を刻む写本を解説。カリグラフィーの作品制作はもちろん、タイポグラフィー、欧文活字デザインにも役立つ、カリグラフィーのすべてがわかる。

 カリグラフィーが神を称える手段であった中世からルネサンスにおける展開、ウィリアム・モリスによる芸術様式の復興を経て、エドワード・ジョンストンにインスピレーションを受けた現代まで、カリグラフィーの歴史を豊富な図版で解説。また、世界の一流機関が所蔵する比類ないコレクションから、カリグラフィーを語る上で重要な76の写本について、優れた技術と技能を詳しく紹介している。

 文字を書くうえでも参考になり、街にあふれる看板や商品のデザインを何気なく見る時など、日常にも楽しみが広がりそうだ。

目次

カリグラフィーの技法と歴史/写本の作り方/文字を書く/各時代のカリグラフィー/注、引用文献/索引/街に出よう、そしてアルファベットを探そう 髙宮利行/本書を使いこなすために:あとがきにかえて 安形麻理/謝辞

著者プロフィール

● 著者:パトリシア・ラヴェット
イギリスのカリグラファー、彩飾画家。世界各地でカリグラフィーの実践指導や講演を行う。カリグラフィーと伝統工芸への貢献により、大英帝国勲章(MBE)を受勲。著書にThe Historical Source Book for Scribes( London, British Library, 1999. 共著)など。

● 監修:髙宮利行(タカミヤ・トシユキ)
慶應義塾大学名誉教授(中世英文学、書物史)。1966年慶應義塾大学経済学部卒業、1968年同大学文学部卒業、1970年同大学大学院修士課程修了、1973年博士課程単位取得退学、1978年ケンブリッジ大学博士課程修了。ロンドン好古家協会フェロー、シェフィールド大学名誉博士、グラスゴー大学名誉博士。著書に『本の世界はへんな世界』(雄松堂出版)、『西洋書物学事始め』(青土社)、訳書に『西洋書体の歴史 古典時代からルネサンスへ』(慶應義塾大学出版会)など、監修書に『西洋活字の歴史 グーテンベルクからウィリアム・モリスへ』(慶應義塾大学出版会)、『初期イングランド印刷史』(雄松堂出版)など多数。

● 翻訳:安形麻理(アガタ・マリ)
慶應義塾大学文学部教授(書誌学、情報メディア)。1999年慶應義塾大学文学部卒業、2001年同大学大学院修士課程修了、2003年ロンドン大学修士課程修了、2005年慶應義塾大学大学院博士課程修了。博士(図書館・情報学)。著書に『デジタル書物学事始め グーテンベルク聖書とその周辺』(勉誠出版)、『図書館は市民と本・情報をむすぶ』(共編著、勁草書房)、翻訳書に『西洋活字の歴史 グーテンベルクからウィリアム・モリスへ』(慶應義塾大学出版会)など。

書籍情報

『カリグラフィーのすべて 西洋装飾写本の伝統と美』
グラフィック社刊
著者:パトリシア・ラヴェット
監修:髙宮利行
翻訳:安形麻理
発売日:2022年9月
仕様:A4変形 並製 総224頁
定価:4,290円(10%税込)

関連記事