【漫画】憧れの先輩との奇妙な再会は意外な結末にーー創作漫画『UFOで有名になった君の街』がおもしろい
ーーお盆という設定や作中の描写から異なる結末を想像してしまった作品でした。創作のきっかけを教えてください。
あろめみ:本作はヘンリー・ジェイムズの『ねじの回転』という小説からインスピレーションを受けています。この作品は「幽霊話に子ども1人が登場することによって物語にひとひねりが加わる。じゃあ子どもが2人登場したら物語にふたひねりが加わるのか」というお話なのですが、“ふたひねり”という言葉がとても印象的でした。『ねじの回転』のように先輩が幽霊なのではないかというオチが想像できるよう物語にひねりを加えつつ、物語にもうひとひねりが加わるように結末を考えました。
本作の終盤でUFOが出てくるシーンは村上春樹さんの小説を意識しています。彼の作品には日常のなかで超能力や異世界といった現実離れしたものが登場しますが、その現実と空想の塩梅がすごく好きで。この世ならざるなにかでオチをつけたいと思い、終盤にUFOを描きました。
ー-印象に残っているシーンを教えてください。
あろめみ:後輩の雪ちゃんが野田先輩に東大へ行くことを約束するシーンがありますが、個人的に雪などの冬に関するモチーフが好きであるため無意識のうちに絵に気持ちが入っていたと思います。
またUFOのデザインはありきたりなものにしようと思っていたため、教科書どおりのUFOを描くことが楽しかったです。
ーーなぜUFOはありきたりなものに?
あろめみ:ギャグやユーモアのある描写として描きたかったからですね。ここでオリジナリティのある複雑なUFOを出すと読者も「これはなに?」といった疑問を抱くかもしれないと考えつつ、こんなにもベタベタなUFOが出てくることはオチとして面白いものになるのではないかと思っていました。
ーー『UFOで有名になった君の街』というタイトルにした背景を教えてください。
あろめみ:ロックバンド・ハヌマーンの『Fuzz or Distortion』に登場するフレーズ“デタラメに付けた邦題/『UFOで有名になった君の街』”から引用しています。この曲が好きであり、ハヌマーンを知っている人が楽しめるポイントになればと思って本作のタイトルに使わせてもらいました。
物語をつくるなかで無駄な部分は切っていきますが、タイトルや『UFOで有名になった君の街』という映画のポスターに関するシーンは物語に対する意味が薄い、遊びや余白といった部分となっています。オチにUFOが登場するためお話の本筋と完全に離れているわけではありませんが、物語に関係のない部分ではありますね(笑)。
ーー個性的な描線が作品の雰囲気を生んでいたと感じています。
あろめみ:本作はすべてデジタルツールで作画しており、「CLIP STUDIO PAINT」と「Photoshop」を併用しています。鉛筆に近い筆感のブラシを使い、とくに強調したい部分は線を重ねながら描いていますね。描き終えたあとにはモノクロの2階調に加工するため、線を重ねた部分は白とびせずにしっかりと残ります。
ーーあろめみさんはイラスト作品も多く投稿しているかと思います。漫画作品を創作する背景について教えてください。
あろめみ:とくに10代のころは漫画や絵、小説や音楽など、たったひとつの作品で生活や考え方に影響を及ぼすような強烈な作品があると思っていて、自分もそんな作品をつくりたいといった気持ちがつよいです。
小学生のころ『ドラゴンボール』に夢中になって、絵を描きはじめました。本当にすばらしい作品って人を変えてしまう力があり、自分も作品に変えられて今の人生があります。10代の子たちや普段漫画を読まないような人たちに向けて、その人の人生に組み込まれるような作品をつくりたいなと思って漫画を描いています。
ーー今後の活動について教えてください。
あろめみ:今まではインターネットのなかでひっそりと気の向くままに活動していけばいいという気持ちだったのですが、今後はもう少し精力的に自分をアピールしていきたいと思っています。今後も作品をつくっていくので、たくさんの人に読んでもらえるよう色んなことに挑戦していこうと思っています。