『こち亀』が愛される理由 羽生土地郎、多部田多部五郎……両津とバトルを繰り広げたクセが強い迷キャラの存在
多部田 多部五郎(下町料理評論家)
下町料理評論家を自称する多部田多部五郎。青山にできた「高級下町料理店」で遭遇し、「クリームコロッケは最高」「このとんかつも実に上品な味だ。このまろやかに広がるゴージャスな味は…」などと、店員に話す。すると両津は腹を立て、頭を踏みつけた。
そして両津は「コロッケは100%ジャガイモが本道。クリームコロッケやカニコロッケは邪道」などと啖呵を切り、「下町本来の食事マナー」を講義する。そこで今や語り草となっている、コロッケを潰してソースをかけてもんじゃのように食べる方法をレクチャーしたのだ。
しかし多部田はこれを「単にあんたの家が貧乏だっただけじゃないのか」と一蹴し、料理対決に発展。下町のプライドがかかった対決で、両津は大暴れるするのだった。
両津が誇りを持つ「下町料理」で喧嘩を売り、勝負することになった多部田。かなりイヤミな感じに描かれたこともあり、読者もヒートアップさせたようだ。
大前田 長五郎(インチキ料理評論家)
こち亀ファンのなかで語り継がれるインチキ料理評論家が、大前田長五郎である。きっかけは3年間で客が3人しか来なかったというそば屋「当たり屋」の再建計画に乗り出したこと。
両津は「全て普通なのがダメ」として、店を半壊し、内も外もボロボロにする。その後読者を装って電話をかけ、グルメ雑誌の記者を再建の切り札として店に呼び寄せ、サクラを使って繁盛しているように見せかける。さらに主人にはモヒカンサングラスにバニースーツを着用させると、取材に来た記者を主人と両津が追い返した。するとそれが強いインパクトを与えたのか、雑誌に掲載される。
評判を聞きつけてやってきたのが、料理評論家の大前田だったのだ。両津はこの男がインチキであると見抜いているようで、カメラを引き連れてそばを食べる大前田の前で、着流しを着た怖そうな客を演じ「惚れ惚れするような味だぜ」「これをまずいというやつは人間じゃねえ」と言いながら外に出る。すると大前田は「七ツ星を差し上げましょう」と話し、「当たり屋」は超人気店となった。
漫画では「雰囲気に流される料理評論家」と言う形だったが、アニメ版では自身が有名な評論家であることを鼻にかけタダ飯を食い、さらに本物の味に一切気が付かず、自分への態度で評価を決める無能な料理評論家として描かれた。最後には両津と中川を激怒させバトルに発展し、最終的に失脚することになる。
こち亀ファンのなかにはアニメのイメージが強い人もいるようで、「無能で悪徳な料理評論家」の代名詞のように語られることも多い。
派出所のメンバーだけではない、個性的な人物による破天荒な行動。これも『こち亀』が40年間愛され続けてきた理由の1つではないだろうか。