『NARUTO』サスケ、白、カカシ、シカマルに自来也……年代で“推しキャラ”が変わる楽しさを考察

 中高生の頃から読んでいた、長年人気の漫画作品。ふと気づくと、好きなキャラクターが変わっている(または増えている)ことはないだろうか。かっこいい、かわいいと思うキャラや感情移入するキャラが変わる、好きなシーンやセリフが変わる。そのときの置かれている自分の状況によって、今はこのシーンが特に心にくる……など、漫画を通して自分の視点の変化、成長を感じることもあるだろう。

 筆者がそれをまじまじと感じたのは、週刊少年ジャンプで連載されていた『NARUTO-ナルト-』(作者:岸本斉史)だ。これまで何十回と『NARUTO-ナルト-』を読み返してきた、筆者の視点の変化を例に、年代やライフステージに応じてさまざまな楽しみ方ができる、本作の魅力を掘り下げてみたい。

年代によって変わる、漫画『NARUTO』の感じ方や捉え方

 漫画好きにはいまさら説明するまでもないことだが、本作は、落ちこぼれである主人公のうずまきナルトが里一番の忍である”火影”を目指し、仲間と共に数々の試練を乗り越え成長していく姿を描いた物語だ。約15年の連載期間を経て、2014年に完結。以降も世界中から愛され続ける作品である。調べてみて気づいたのだが、『NARUTO』は1999年に連載を開始しており、少年編のナルトやサスケ、サクラなどの年齢は13歳となっている。筆者は1986年生まれなので、どうやら連載当初は同い年だったようだ。当時は中学校の友達が持っていたコミックスを借りて何気なく読んでいたので、自然と同年代のナルトやサスケ、サクラに感情移入することが多かった。

 筆者が10代の頃は、ダントツでサスケが好きだった。クールでイケメン! 千鳥の技かっこいい! とキャーキャー言いながらサクラと同じような気持ちで読んでいた。正直、キャラの背景やセリフ・表情の裏にある気持ちまでは読み込めていなかっただろう。NARUTOの漫画を読んで、泣いたという記憶はない。こうした、相手の気持ちを推測し、理解する『社会的視点取得能力』というものは、10代後半になるにつれて段階的に取得されていくものであるらしい。

 10代後半~20代前半になると、男の友情に目を向けるようになったり、少し背伸びをして年上のキャラに憧れたりしたものだ。例えば、連載当初はあまり印象に残っていなかった、ナルトたちが初めての任務で出会った敵、再不斬と白との戦い波の国編(コミックス2~4巻)がある。拾われた再不斬への忠誠心は高く、「道具」として利用されているとわかっていながらも、大切な人を守りたいという白。再不斬もそんな白と接するうちに、道具以上の存在として感じるようになる。この2人の関係性――表面的ではなく深いつながりに、思わず涙した。また、火影を目指すナルトに対して、「何のために、誰のために強くなりたいのか」と大きな影響を与えたシーンでもあるだろう。いつもは顔を合わせればケンカばかりしているナルトを、サスケが身を挺してかばったシーンにもグッときたものだ(続編となる『BORUTO』でも娘を守るサスケの姿を見て波の国編を思い出した)。

 好きなキャラとしては、もっぱらカカシ先生がかっこよく思えた。銀髪、片目、マスクキャラで普段はおちゃらけながらも、冷静沈着でミステリアスな雰囲気をまとった姿。苦悩を背負い、ふがいなさを感じながらもナルトたちを導く存在としても、萌えていた。

 さらに筆者が20代後半になると、シカマルやネジ、イタチのかっこよさに気づくことになる。連載当初はあまり目立たない印象だったが、実はIQ200の頭脳派、圧倒する天賦の才と実力、ある意味一番忍びらしい深い愛情を持ったキャラというそれぞれの側面に気づくこととなる。「なぜ今まで気づかなかったんだ……」と。

 例えば、シカマルは普段はめんどくさがりでぼーっとしている印象が強い。中忍試験の第三試験予選と本選(コミックス9巻~13巻)でも、「めんどくせー」とは言っても、詰将棋のように相手を追い詰めつつ、最後はギブアップしてしまう一見していつものシカマルだった。だが、中忍になって初めての任務サスケ奪還編(コミックス21巻~26巻)のときには、それぞれ性格も考えていることもバラバラのメンバーの足並みを揃え、リーダーシップを発揮する姿には驚いた。結局、任務は失敗に終わってしまったが、責任感が強く、仲間想いな一面、そして「次こそは……完璧にこなしてみせます……!」の初めての男泣きには胸が締め付けられた同志も多いことだろう。さらに、第十班(アスマ班)の任務、飛段・角都との戦い(35~38巻)。シカマルは自分が助けに行けなかった悔しさ情けなさを抱えながらも、火の意志を継ぐと絶望から立ち上がる。強く成長していくシカマルの生き様は、本当にかっこいいなと思った。忍は身体能力や忍術だけで敵を倒すわけではないと、思わせてくれたキャラだ。

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