ギャグ漫画家・藤岡拓太郎が語る、絵本の“笑い”と“かわいさ” 「誰にでも分かる言葉で、誰よりも笑えるものを描きたい」

――子どものどういう仕草に愛らしさを感じますか?

藤岡:『ぞうのマメパオ』を描きながら、ああ子供ってこういうとこがかわいいな、と思った箇所がたくさんありました。例えばジュンちゃんが、グミをくれるおばあちゃんとの別れ際の場面で一人でブツブツ言っているところとか、雪が降ってきたのを見て脈絡なくカニのダンスを始めるところとか。

 絵本には描いていないですが、子供が変な自転車の乗り方してるのとかもかわいいですね。サドルのうしろの台に座ってペダルを漕いでたりとか。道を歩いてるところを見ても、子供は動きに無駄が多くて、それがかわいいです。

――たまごやさんのおじさんの造形と予期できない行動が魅力的でした。おじさんを描く際にこだわっていることはありますか?

藤岡:何を考えてるか分からないような、ちょっとおっかない、でも決して悪い人ではないのだろうと感じさせるようなおじさんが描けていたらいいなと思います。

『ぞうのマメパオ』(ナナロク社)より

漫画と絵本の違いとは?

――196ページという長い絵本ですが、この長さにされた理由やこだわりはありますか?

藤岡:ラフを描いていくうちに、先ほども書いたような、子供の動きのかわいらしさをじっくり見せたいというのがテーマの一つになったので、自然とこの長さになりました。

――漫画と絵本ではつくる際にどのような違いがあるでしょう?

藤岡:「誰にでも分かる言葉で、誰よりも笑えるものを描きたい」と思って、小学生から大人まで笑わせるつもりで漫画を描いているのですが、絵本はもっと下の、3歳、1歳でも(なおかつ大人も)笑えるものを描こうと思っています。そうなると自然と言葉が減ってきます。絵だけで読者の体をこちょこちょするような感じです。

――藤岡さんにとって絵本とはどういうものでしょうか? 描かれた上で、その表現の可能性について思うことはありますか?

藤岡:ページをめくることそれ自体が快感につながっていくというか……。漫画や小説など他のどの本よりも「ページをめくる」というアクションが無視できない、最も音楽に近い本の形だと思います。絵本の可能性についてはよく分かりませんが、「笑える絵本」に関してはまだまだ開拓できそうなところがあると思います。絵本でしかできない笑いのアイデアが生まれたら、また作ってみたいです。

――藤岡さんが好きな絵本はありますか? その魅力について教えてください。

藤岡:好きな絵本を選んで下さいと言われると、ほとんどが長新太さんの絵本になってしまいます。絵とリズムとおかしみ。長さんの絵本は、へんてこなお話が唐突に始まって、唐突に終わります。『そよそよとかぜがふいている』『ゴムあたまポンたろう』『ごろごろごろ』の終わり方とか、最高です。そこにあざとさや無理がある感じはなく、長さんの絵本の世界の中では美しく調和している感じ。あとはなんといっても絵が好きです。ただただ長さんの絵が好きです。絵本やカラーイラストを描いているとき、描き上がった絵よりも、パレットに残った、ぐちゃぐちゃっとなっている絵の具のほうが味があって綺麗だなあと思うことがよくあるのですが、長さんの絵は、そのパレットに残った絵の具のようなスゴイ絵だと思います。長さんの絵本をまだ読んだことがない人におすすめの3冊は、『ちへいせんのみえるところ』『そよそよとかぜがふいている』『ごろごろ にゃーん』です。

――帯文に「読み終わったら踊りましょう」とありますが、藤岡さんはどういう時に踊りたくなりますか?

藤岡:落ち込んだ時などに、横になったりすると余計気分が沈んでくるので、無理やり踊ることで楽しい気持ちを取り戻しています。『シンプルメン』という映画の中で、妙なダンスをみんなで踊る場面があるのですが、そのダンスをよく踊ります。

――今後のご展望を教えてください。

藤岡:今回の『ぞうのマメパオ』のような、かわいらしさが同居した笑いもまた作ってみたいのですが、次はまた違うタイプの笑いを、漫画で描いてみようと思っています。

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