『呪術廻戦』が突きつける、バトル漫画の暗黒面 人間VS人間を描いて新たな次元へ

 主人公の過去の戦いが裁判の対象になるという面白い展開だが、それ以上に伝わってくるのは、虎杖の中にある罪の意識だ。祖父を亡くして以降、虎杖は「死」について考え続けており、戦いの中で呪霊の命を奪う度に、自分のやっていることは殺人と同じなのだと考えるようになっていく。そして、渋谷事変では、宿儺に肉体を乗っ取られたとはいえ、自分の手で無関係な民間人を殺してしまった。そのことに対して虎杖は強い罪悪感を抱いていた。

 そんな虎杖に対し、日車は法律の言葉で「君に罪はない」と弁護した。本誌で読んだ時はアクロバティックな考え方である一方、説得力のある救済だと感じたが、コミックスで読むと、それでも「俺のせいだ」と言う、虎杖の言葉の方が重く響く。

 少年漫画におけるバトルとは「突き詰めると“殺し合い”なのだ」というのが『呪術廻戦』の世界観だ。多くの少年漫画が曖昧にしている、バトルの中にある暗黒面から本作は目を逸らさない。「死」をめぐる自問自答とド派手なバトル。この両輪があるからこそ『呪術廻戦』は現代の少年漫画として熱烈な支持を獲得しているのだろう。

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