舞城王太郎がOP手がけたアニメ版も大人気 『錆喰いビスコ』が壊れた世界で立ち上がる力をくれる

 赤岸Kによる劇画のように荒いタッチのキャラクターや、mochaが描く荒廃した世界が、アニメではくっきりとした輪郭を持ち、パキッとした色調のものになっている点も、アニメ版で興味を引く点。小説とは正反対の方向性だが、どちらからもビスコやミロの強さといったものをしっかりと感じ取れる。リアルに描けば毒々しいからと敬遠する人も出そうなキノコも、漫画っぽいタッチとなってポンポンと生えていくから見ていて楽しい。それでいて、小説を読んで感じたビスコの戦いをそのまま形にしてくれているように見えるところが巧い。

 小説でもアニメでも、仲間を助けたいと怪物に挑み、権力にも向かっていくビスコの戦いぶりはカッコいい。弱々しげに見えたミロが弓の扱いを覚え、キノコに関する知識も活かして戦ってのける姿も美しい。黒革によって人質にとられたジャビを救出に向かったビスコに大変な事態が訪れた後、2人はどうなってしまうのか? そして世界は? アニメから見始めた人には先が気になる展開が続く。

 ここで言えるのは、『錆喰いビスコ』は1月8日に最新刊の『錆喰いビスコ8 神子煌誕!うなれ斉天大菌姫』が発売され、シリーズとして続いているということだ。宮崎駿の『風の谷のナウシカ』に描かれた、腐海が汚れた大地から毒を吸い取り朽ちて浄化していく設定に、どこか重なる部分も感じられるストーリーが進んでいった先。大きく変化してしまった世界を再び正常に戻そうとする地球の力めいたものも浮かんで、スケールが広がっていく。

 そんな展開もぜひアニメ化して欲しいところのだが、小説の第1巻に1クールをかけるアニメの丁寧な作り方では、先が描かれるのは先になりそう。気になる人は小説で続きを読み、それがどう映像化されるかを想像して待とう。

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