『王様ランキング』非力なボッジの闘い方が教えてくれるもの “強きをくじく”力とは?

“強きをくじく”と評されたボッジの力

 デスパーとの修行、そしてミツマタとの特訓で身に着けたボッジの能力。デスパーはボッジの力を「弱きを助け 強きをくじく 王の剣」と評している。

 目には枝が刺さり体中に傷が刻まれたミツマタなど、これまでボッジが弱き存在を助けるシーンは描かれてきた。ただ“強きをくじく”という表現には少し違和感を覚える。バトルシーンが登場する漫画において、相手を“くじく”よりも“倒す”や“打ち破る”といった言葉の方が馴染み深いものであろう。

 ボッジは神経へ直接的に攻撃することで、相手を失神させることができる。12巻までのエピソードにおいて、他のキャラクターが闘いによって流血する描写はあるものの、ボッジの剣で血が流れたシーンは存在しない。そしてボッジの剣技を受けたキャラクターはみな崩れ落ちるように気絶している。ギガンにいたっては交戦後にボッジへ忠誠を示した。

 ボッジが剣を振るのは相手を“負かす”や“倒す”ためではなく、相手を改心させる、または落ち着かせるため。弱き存在を助けてきたボッジの姿を思い返すと、そのように考えた方が自然であるはず。故に相手の身体だけでなく、心までも“くじく”といった意味から。デスパーはボッジの力を「強きをくじく」と表したのだと考える。

 ボッジがギガンと対峙した際、助言をするデスパーの姿を映した回想が描かれている。

どんなものも小さな小さな塊の集まりなんです/それが手と手を取り合って/大きな塊となっている/そして固いものほどしっかりと強く手を結びあって隙間がない

だけどなかには結ぶのをおろそかにしている箇所もあります/仲が悪いのかもしれませんね/そんなところは驚くほど脆(もろ)い

 我が子である「ダイダ」を利用して復活したり、ヒリングの暗殺を許可したりーー。12巻までのエピソードにおいて、ボッス王国の内乱は“強さ”の象徴である「ボッス」によって起きたと言っても過言ではない。強き者によってボッス王国の結束は綻びを生み、脆さに漬け込むように冥府の罪人は侵攻していった。

 脆さを突くことで強きをくじく。脆い箇所を壊すのではなく刺激するボッジの剣技は、ボッス王国の民が手と手を取り合って、しっかりと強く手を結ぶ、強固なひとつの塊となる未来を想起させてくれる。

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