【今月の一冊】現代若者論から文学賞受賞作まで、各出版社の「新人作品」を紹介
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『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』佐々木チワワ
10代の頃、実家に居心地の悪さを感じて、夜な夜なひとり公園で過ごすことがあった。心の孤独は他人からは見えづらく、影に隠れてどんどん進行していく。こうしている今も、あてもなく居場所を求め彷徨っている若者が、そこかしこにいるのだろう。
歌舞伎町にあまり馴染みのない私からすれば、本書に記されている若者のリアルは驚きの連続だった。事件直後に血まみれ状態でタバコをくゆらす被告の写真が出回ったホスト殺人未遂事件や、10代の男女が遺書を残しホテルから飛び降り自殺した事件などは、ニュースを見て知っていたし、そういった事件が絶えないイメージから、歌舞伎町に対する怖さ、近寄りがたさも僅かに感じていた。が、本書によって、あまりに軽く捉えられすぎている命の在り方をハッキリと認識させられた実感があり、怖さ以上に、心苦しさとやるせなさが残った。
取材を受ける若者たちの拙い言葉に触れるたび、感情がヒリつく。”ぴえん系女子”とカテゴライズされる少女たちにも、個々に思い描く幸せの形があるだろうし、それぞれの色で織り成される人生があるはずだ。危ない香りに心惹かれる気持ちも分からなくはないが、どうか最悪の結末には至らないでほしい。そう願うとともに、歌舞伎町とは無縁な人にこそ、本書からその実態を知ってもらいたいと感じた。間接的な手によって、大きく救われる未来もあるはずだから。(とり)