5GAPが語る、コントに捧げた人生の悲喜交交 「汗をかいて一生懸命やって、あとは先輩や後輩に骨を拾ってもらう」

コンビ結成後最大の危機

 2016年、コンビ結成後最大の危機が訪れる。クボケンさんの持病の痛風と慢性腎不全が悪化。医師から「移植手術をしなければ3年で死にます」と告げられた。
「お医者さんから手術のリスクの説明も受けました。手術で違う神経を切ってしまって、足が動かなくなった方もいますとか。この時ばかりは、もう芸人を辞めなければならないかもって思うこともありましたね」
 しかし、手術をしなければ命を失ってしまう。
 当時72歳だったお父さんから、腎臓の移植を受けることになった。
「命は助かってもライブに出られなくなるかもしれないとか、ぼくらは動くコントをやっているので、出られても、以前のようにはボケられないのではないかとか」
 それでも、トモさんはクボケンさんの復帰を待ちながら、一人で仕事を続けた。
「一度、二千人規模のイベントで一人でネタをやって、とろサーモン、自分、中川家さんっていう順番でM-1チャンピオンに挟まれて、大スベりしました」
 相方の大切さが、身に染みて分かった。「とにかく死なないでくれ」と願った。
「病院にお見舞いに行った時、クボケンが身体中、管だらけになって、見るからに重病人という感じで。そんな状態なのに、寄り目の顔芸をして笑わせようとしてくるんですよ。それがまた、最高に面白くて」
 クボケンさんの芸人魂に、仲間の芸人たちも笑った。
 術後1ヵ月入院し、退院からわずか2日後、クボケンさんは結婚式を挙げた。場所は、奥さんのお母さんの病室。余命わずかだった。
「自分もまだ全然回復していませんでしたが、自分の主治医にもお母さんの病気の状況を説明して、どうしても行かせてほしいと」
 クボケンさんの奥さんは、福島県のスパリゾートハワイアンズの元フラダンサー。実家と東京を行き来して、自分のお母さんとクボケンさんを看病していた。
「本当に素晴らしい奥さんなんです。後で芸人仲間も集まって結婚式を開いて、その時に奥さんが踊ったフラダンスを見たら、芸人みんな泣いちゃって」

 手術からの復帰後、クボケンさんはお父さんの腎臓と一緒にステージに立っている。
 芸人になることに反対していたお父さんも、群馬で公演がある時はいつも観に来てくれる。「母親から聞いた話では、町内会の寄り合いとかで『うちの子は吉本でお笑い芸人をやってまして』なんて挨拶してるらしくて」
 クボケンさんは「酔っ払って余計なことをしゃべらないといいんですけど」と嬉しそうに語る。

 大きな危機を乗り越えたものの、現実は厳しい。キングオブコント2020と2021では2年連続準決勝で敗退。
 トモさんは「心が折れた」と率直に語る。
「でも錦鯉がM-1優勝した姿とかを見て、キングオブコントには出ないといけないと思いました。ネタを作る動機にもなりますし」
 同期でもある錦鯉・渡辺さんの躍進に、奮起する。
 キングオブコント準決勝敗退後のインタビューで口にされていた「おじさんの意地」について聞いてみた。
 トモさんは「ぼくらの世代、くすぶっている人たちが沢山いると思うんです。自分たちも含めて、面白いのがまだまだいるぞ、って世の中に知らせたいですね」と意気込む。
「結局、汗をかいて一生懸命やった時ほどいい結果が出ますね。トモと二人で流れを考え抜いて、ガッと気持ちを入れて、冷や汗、脂汗、脇汗、股の間まで汗をかきながら」
「そうですね。汗をかいて一生懸命やって、あとは先輩や後輩に骨を拾ってもらうみたいな感じで、全力でやってます」
 お二人の生き様を感じる言葉、吹っ切れた表情が清々しい。

 近年、千鳥のお二人や、博多華丸・大吉さんなど多くの先輩芸人たちが、5GAPの面白さを強く推している。2020年から2021年にかけては『いろはに千鳥』などのテレビ番組に度々出演して爆笑をさらい、大きな話題となっている。
 トモさんもクボケンさんも「たくさんの人に助けられてきた」「恩返しがしたい」と言う。
 きっとお二人の人柄によるところも大きいだろう。しかし人柄だけではなく、確かな実力と、汗をかいて一生懸命やり続ける姿があるからこそ、周りの人が惹きつけられ「売れてほしい」と願うのだと思う。
 お話を伺った数日後、5GAPが出演するお笑いライブをこっそり観に行った。
 開演前の列に並んでいると、すぐ後ろにいた親子連れの人たちの会話が聞こえてきた。「この子が5GAP大好きで」
 ステージにトモさんと、クボケンさん扮するホワイト赤マンが登場。一撃必笑のコントに、子供から年配の人まで、ゲラゲラと笑っていた。
 筆者も含めドリフを愛した世代の人、『爆笑レッドカーペット』でファンになった人、そして、その人たちの子供も、5GAPを好きになってゆく。
 お二人が夢を諦めず20年余の間積み重ねてきた笑いの数々は、種となり、あちこちで花開いている。

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