OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』

連載「月刊オカモトショウ」年末特別版 絶対に読むべき、2021年のコミックBEST5はコレだ!

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカルとして、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウ。実は彼、高校時代から現在に至るまで漫画雑誌を読み続けてきたほどの“漫画ラバー”だ。本連載ではオカモトショウが愛する名作マンガ&注目作品を月イチでご紹介。今回は2021年の推しマンガ5作をセレクトしてもらいました!(森朋之)


 最初はベスト3にしようと思ったんですけど、絞り切れず5作になりました(笑)。順位を付けられないのはもちろん、この連載自体がそうなんですけど、専門的な観点ではなくて、あくまでもイチ読者として「今年はこれだったな」と思うマンガを選ばせてもらいました。独断と偏見でセレクトしているので、それを踏まえて楽しんでもらえたらいいなと。今回選んだ5作はいまも連載中で、まだ完結していません。リアルタイムで盛り上がっている作品ばかりなので、ぜひマンガ好きのみなさんと共有したいですね。

 傾向としては、シリアスな作品が多めかもしれません。自分のアルバム(『CULTICA』)もそっち寄りだったし、今年の俺のモードが反映されているのかもしれないですね。OTKAMO'Sのツアーもやれたし、落ち込んでいたわけではないんだけど、日々のちょっとしたことが積み重なっていたというか……。それは自分だけではなくて、世間的にもダークヒーローものが注目されているし、最近のマンガの傾向なんでしょうね。それでは、オカモトショウが選ぶ、2021年のベストマンガをご覧ください。

『シャドーハウス』(ソウマトウ)

※作品説明:“シャドーハウス”と呼ばれる洋館に住む、顔のない“シャドー”の少女·ケイトと、彼女に仕える“生き人形”エミリコを軸に展開されるサスペンス系の作品。かわいい絵柄と不穏な雰囲気、謎めいたストーリーのバランスも本作の魅力だ。「週刊ヤングジャンプ」で連載中。

 以前もこの連載で紹介させてもらったんですが、その時点では“謎しかない”という感じだったんです。ご主人様のケイトはなぜ真っ黒なのか、エミリコはなぜ彼女に仕えているのか、洋館の大きさはどれくらいなのか、他の部屋はどうなってるのか、何もかもわからなくて。ただ、それがすべて巧妙な伏線になっていて、「物語が進むにつれて解き明かされるんだろうな」という予感があったんです。連載から3年経って、単行本9巻目にしてようやく、謎が解明されてきて、「ほら、やっぱり面白いじゃん!」って盛り上がってます(笑)。

 時間をかけて盛り上げるやり方って、けっこう賭けだったと思うんですよ。最初から勢いよく飛ばさないと飽きられたり、他の作品に取って代わられる不安もあったはず。それでも、謎を残したまま「どうなるんだろう?」と読者を惹きつけて、徐々に盛り上げてきたのはすごいなと思いますね。

 とはいえ、まだぜんぜん最高潮ではなくて。やっとストーリーが動き出したところなので、今からでもぜひ読んでみてほしいです。絵柄がファンタジーっぽいから、「かわいらしいものを愛でるマンガかな」と思っている人もいそうだけれど、ぜんぜんそんなことなくて、めちゃくちゃスリリングな作品なので。カッコいいダークさがあるんですよね、このマンガは。

『満州アヘンスクワッド』(原作:門馬司 漫画:鹿子)

※作品説明:昭和の満州を舞台にしたクライムサスペンス。主人公は関東軍の兵士として満州にやってきた日方勇。右目の視力を失い、農業義勇軍として従事していたが、ペストにかかってしまった母を救うために、農場の片隅で栽培されているケシを阿片にして金もうけすることを企てる。「週刊ヤングマガジン」で連載中。

 まず『満州アヘンスクワッド』というタイトルが超かっこいい(笑)。“良さそうじゃん”ってそそられたし、実際、めちゃくちゃおもしろくて。ウェブではじまって、最近ヤンマガに移籍したんですけど、にわかに盛り上がってますね。

 舞台は昭和10年代の満州。歴史モノなんですけど、緻密に取材を重ねてリアリティを求めるというより、エンタメとしての爽快感がすごくあるんです。薬学の知識がある主人公が高純度の阿片を作ってしまうくだりは『ブレイキング·バッド』みたいだし、悪役がとことん悪いことをやって、人間同士の複雑な絡み、ヒューマンドラマの要素もあるんだけど、ぜんぜん既視感はなくて。“満州”“阿片”という要素がデカいと思うんですけど、オリジナルな作品になっていると思います。主人公が苦難を乗り越えて成長する王道感も好きですね。

 また青年誌らしいエグさ、エロさもあるし、スピード感、テンポ感もすごくよくて。まさに麻薬的な中毒性があるというか。トリップしている人間の顔の表情とかも、めっちゃいいんですよ。たとえば『北斗の拳』の“ひでぶ”や、『ジョジョの奇妙な冒険』の“ジョジョ立ち”みたいな、学生がマネしたくなるようなマンガ的表現がクセになります(笑)。

『君が獣になる前に』(さの隆)

※作品説明:20××年の年末、都内のターミナル駅で史上最悪のテロ事件が発生。その場で死亡した実行犯は、25歳の若手人気女優。彼女の幼なじみだった主人公は、なぜ彼女が“獣”になった謎を追求し、事件を止める手段を探し始める。人間の“獣性”をテーマにかかげた、バイオレンス満載のノワール·サスペンスだ。「週刊ヤングマガジン」で連載中。

 有名な女優になった幼なじみと久しぶりに会った直後に、彼女が大量に人を殺すテロ事件を引き起こしてしまう。主人公の男は“あの子が獣になる前に、止める方法はなかったんだろうか?”と事件の解明に乗り出す――と、ここまでが連載の1話目なんです。『シャドーハウス』とは真逆というか、しょっぱなからぶっ飛ばしてたんですが、“これはおもしろくなりそうだな”とアンテナに引っかかったんですよね。その後もどんどん飛ばしてるんですけど、ガス欠にならず、長いスパンで物語を引っ張っていけそうな力を感じるというか。1月に1巻が出るので、まだ始まったばかりなんですが、めちゃくちゃ期待してますね。

 最初の設定も奇抜だし、わりと早い段階でタイムリープの要素も入ってきて。最近のヒット作の影響も感じられるし、定番の流れも取り入れてるんだけど、それだけに収まらず、“ここから何を見せてくれるんだろう”というワクワク感がある。緻密に計算して、最初からヒット作が約束されているようなマンガもあるけど、『君が獣になる前に』はいい意味で乱暴というか、“俺にしかやれないことがある”みたいな勢いがあるんですよ。まだ始まったばかりなので、ぜひマンガ好きのみなさんと共有したいですね。

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