グラビアライターが選ぶ、2021年注目の写真集5冊 人生に共感と豊かさを与えてくれる名作がズラリ
菊地姫奈『はばたき』(講談社)/HIROKAZU
2021年は、菊地姫奈の存在感に圧倒させられる一年だった。昨年10月に「ミスマガジン2020」でミス週刊少年マガジンを受賞し、今年10月までの1年間、ミスマガのひとりとして数々のグラビア誌に登場。ファーストインプレッションは、素朴な少女。それでいて、受賞時15歳とは思えぬほどのプロポーションには、ひどく衝撃を受けた。そしてそのギャップが、彼女の魅力だとも感じていた。
本作は、16歳の菊地姫奈の無垢な瞬間がたっぷり収められた一冊だ。制服、ジャージ、競泳水着、Tシャツ。高校生らしい格好をしていると、ミステリアスなオーラはあるものの、やはり素朴さが勝る。自分が16歳だった頃を思い出し、何となく、彼女が抱いているであろう思春期の心情と重ねてみると、おぼつかない指先で、今よりもっと下手に生きていた10代の自分に戻れる気がして、どうもくすぐったい。
けれども、ひとたび肌を見せると一体何を思っての表情なのか、急におくゆかしくなるから見逃せない。特に、表紙にも選ばれているアイスを食べているシーンは、わんぱくな少女と切なげな女性の合間を縫った表情変化に、彼女の深さを見た。状況に応じた笑顔と真顔のバリエーション。ミスマガで賞を獲ったばかりの頃のグラビアと比べても、明らかに緩やかな表情が増えていたのだ。
5年後、10年後、いや、3年後には、さらに本作の重要性が高まっているだろう。急成長の菊地姫奈。最後の一冊に、彼女の写真集をあげないわけにはいかなかった。
写真集の意味を考えた2021年
今年は、とりわけ多く写真集を購入した一年だった。ここに紹介した新作から、80年代〜00年代頃の旧作まで、幅広く手にしては、時代を超えて写真集が自分の手に渡る楽しみを実感していた。
日々生きるなかで、無作為に揺れ動く感情。誰に話すでもない取り止めのない出来事。いつの時代も、どんな人にも、楽しい瞬間と悲しい瞬間が訪れる。特別にも思えるし、平凡過ぎるとも思える自分の人生に、何ともいえない共感と豊かさを与えてくれる写真集。そんな
一冊との出会いは、実にロマンチックだ。
コロナ禍で、物理的にも心理的にも、人との距離を感じるここ数年。けれども写真集に籠る肌の温もりは、時勢に左右されることなく、ずっと保たれている。会いたくなったら、本棚から引っ張り出して、ページをめくればいい。タレント写真集といえど、私は、ここで紹介している彼女たち全員と触れあえた実感を持っている。
さて来年は、どんな写真集と出会えるだろうか。どちらかというと、底抜けに明るいダイナミックなグラビアを期待している自分がいる。