【漫画】レシピ漫画なのに料理をしない回も? 『眠れぬ夜はケーキを焼いて』が心に残る理由

 料理という熟語は、ふたつの文字で構成されている。推量することを表す“料(はか)る”、そして整理することを表す“理(おさ)める”である。料理をしながら一つひとつの物事についてじっくりと考える午後氏の姿は、まるで自身の思考を料かり、理めているようにも見える。本作は食べ物だけでなく、頭のなかにあるモヤモヤとした心情も料理している作品と言えるのではないか。

 午後氏は本作の第2巻のあとがきにて、次のように記している。

私はずっとここにいて、あなたを肯定し続けます。

うんざりする世の中ですが、どうかあなたの日々が少しでも優しいものでありますように。

 生きているなかで、ときに傷つき、落ち込み、立ち上がることができなくなってしまうこともあるだろう。そんなタイミングを迎えた人のなかで、ときに悩み、料理を行い、思考する午後氏の様子が描かれた本作に、午後氏のあとがきに救われた人は多いはずだ。

 ほかの料理本と同じようにレシピや工程をマネしながら、午後氏のように自身の心情を見つめ、じっくりと思考し、完成した料理を身体に入れる。すると影がかかった心が夜明けに近づくかもしれない。

 

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