いま『なかよし』がアツい! 大人が楽しめる王道の青春ラブストーリー&ラブコメを紹介

『王子が私をあきらめない!』アサダニッキ(10巻まで発売)

 キラキラと気品あふれるお姿、IQ500のまなざし、王家の血統を継いでいる……など、とにかくすごい学園の王子である一文字初雪と、ラッキーで大金が手に入り超セレブ学園に入学することになった吉田小梅の学園ラブコメディ。庶民の常識は通用しない、異次元の世界で王子の猛アタックは止まらない……!

 冒頭のぶっ飛んだ設定から、これはラブコメでもコメディ要素が多い漫画なのかなと、じわじわ楽しくなってくる作品だ。キラキラ清々しい王子のお姿とは裏腹に、ぼっち便所飯をしている場面に小梅が鉢合わせる(しかも女子トイレで)ところから2人の関係はスタートしてしまう。「あれ? これ少女漫画で合っている!?」と、意味もなく表紙と背表紙を確認してしまった。

 2人が出会ったばかりの頃は特に、冷静沈着な王子も距離感や規模感がバグっていた。しかし、置かれている地位や境遇の差をひとつずつ埋めていこうとする王子の姿勢をみると、脊髄反射で応援したくなる。また、自分のなかのはじめての感情に気づいた瞬間の王子の顔が個人的にたまらんかった……。

 王子が感情の高ぶりを感じると薔薇がブワァーと舞ったり、落ち込むと大雨になったりする描写も感情の起伏がわかりやすくて面白い。そして、なにより手の甲への口づけがこんなにも似合う高校生っているのか……!?とひとり突っ込んでしまった。

 少女漫画雑誌なのでイチャイチャ場面は多くはないが、はじめて怒ったり、やきもちを妬いたり、臆病になったりしたときの王子の目元や頬、口元など……表情にとても色気を感じ、ふいにドキッとする場面がある。また、作品の前半はコメディタッチのものが多いが、後半になるにつれ、しがらみにとらわれてもどかしく、切ない場面も増えてくる。王子が小梅をあきらめないのはもちろん、王子を護衛する四天王を含めた友人や信頼のおける人たちのこともあきらめない。筆者も王子のその想いがつぶれないようにと、切に願ってしまう。

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