『ガラスの仮面』持って生まれった才能だけじゃない! 姫川亜弓の努力家ぶりがわかるエピソード3選

暗闇の中、「全身で聞く」(46巻)

 マヤと共に紅天女候補になり、試演のための稽古を始めた亜弓だが、とんでもない試練が彼女を待ち受けていた。事故によって失明の危機に瀕するのだ。亜弓の母・姫川歌子は、娘に紅天女を諦め、手術をするように言う。しかし亜弓はかたくなに拒否をする。

 諦めた歌子は、亜弓のために「見える演技」の指導を始める。

 演技をするうえで視力に頼れないなら、それ以外の感覚を研ぎ澄ませるしかないと考えたのだ。

 室内を暗くし、たくさんのろうそくに火を灯した歌子はいろいろなものを落とし、それが何なのか亜弓にあてさせる。

 最後に歌子はヘアピンを落とし、それをさまざまな方向に投げる。亜弓は音によって目線を動かす。暗闇の中、歩くこともままならない亜弓は、転び、ろうそくの火にあたってやけどをしそうになるが、歌子は亜弓に空気の流れを感じるよう厳しく指導する。自分が立っているのが風上か風下か、それがわかっていればリスクは避けられるというのだ。

 歌子の言う「全身で聞くのよ」という言葉が亜弓の心に残る。

 もちろんこれは亜弓の視力低下を観客に気づかせないための特訓の序章に過ぎない。亜弓はどんなに危険でも助けようとする人の手を振り払い、紅天女を自分のものにするために過酷な訓練を積む。

 亜弓の壮絶な努力の極みとも言えるだろう。

 「失明の危機に瀕して、演技の迫力が増した亜弓に、どうすればマヤは勝てるのだろう?」

 そう感じた読者も多いはずだ。

孤高の努力家 姫川亜弓

 マヤは演技の天才だ。マヤにとって演技をすることは本能のひとつであり、常人はとうてい叶わない。それを努力で追い抜こうとするのが姫川亜弓だ。月影先生以外の登場人物は、マヤが努力型、亜弓が天才型だと思っているが、実は逆なのだ。

 今、紅天女に向かってマヤと亜弓は火花を散らしている。亜弓の失明の危機は、彼女をますます努力家にした。その努力が実を結ぶのか、それともマヤが亜弓に勝つ手段が他にあるのか……。

 答えを知っているのは、作者だけだ。




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