『ミミズクと夜の王』残酷でシビアな世界に垣間見える優しさ 作者が本作に込めた思いに迫る

 本稿の冒頭で私は、この漫画のことを「可愛い」と書いた。それはひとえに主人公の可愛さに他ならない。奴隷として過酷な世界を生き抜いてきた、そして、絶望の果てに魔物のいる森を目指した少女・ミミズク。そんな彼女は、どんなことがあっても、持ち前の明るさを失うことはなかった。その姿が、なんともいえず、可愛いのだ。かつていた「村」の人々は、ミミズクに鎖でつながった手枷・足枷しか与えてくれなかったかもしれないが、彼女のこの明るい性格は、彼女が生まれながらに持っている、いわば、神様が与えてくれたものだろう。

 だからこそ、ミミズクの成長は、周りの魔物や人間たち、さらには世界をも変えていくのだ。

 そう、(漫画版がまだ完結していない段階で、こういうことをいうのもなんだが)この再生の物語を最後まで読み終えた時、あなたはきっとなんともいえない優しい気持ちに包まれることだろう。それはたぶん、原作者と漫画家のふたりが本質的に持っている“優しさ”が、一見残酷な物語のコマとコマの間から滲み出ており、その“想い”が我々読者を温かく包み込んでくれるからに他ならない。


関連記事