恋愛のあらゆるはじめてを描く『はじめてのひと』 私たちはいつまでも谷川史子に泣かされ続ける

作品の瑞々しさが心を潤していく

 作品のエピソードは、幸せな結末を迎えるものもあれば、別れを選ぶ物語もある。別れはどうしたって悲しいが、それでも本作が読者の心を温かくするのは、そこに登場人物たちの本音が描かれているからではないだろうか。

 本音を吐露する姿は生々しいが、登場人物が出した結論に、安心している自分がいるのだ。生々しさゆえに共感して、登場人物の心とリンクし、涙してしまう。彼ら、彼女らは私たちではないが、いつかの自分の心と通じるものがある。そして、教えてくれる。間違ってもいい、立ち止まってもいい。自分の心のままに生きていいのだということを。

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