すゑひろがりずが明かす、言葉の和風変換の苦労 「僕らはあくまで“狂言風” 楽しんでいただくことを一番に」

 鼓と扇子を持っての狂言風のネタで話題となっている、すゑひろがりず(南條庄助/三島達矢)。『M-1グランプリ2019』決勝進出から注目を集めた2人は、バラエティ番組の出演やゲーム『あつまれどうぶつの森』の狂言風実況などで、いっそうの人気を博している。

 そんな彼らがこのたび、コンビ初となる著書『すゑひろがりずの をかしな和風会話』(ヨシモトブックス刊)を発売。現代の生活で使えそうな50の和風会話術が掲載されている。彼らにしか作ることができない本著の誕生、狂言風の言葉遊び、そして人気となっている現状について、さまざまに語ってもらった。(タカモトアキ)

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楽しんでいただくことをいちばんに

――まず、この本はどういういきさつで作られることになったのですか?

南條庄助(以下、南條):元々、いつか古典の単語帳みたいな本が出せたらいいなと思っていましたし、この本を監修していただいた構成作家の東大マンさんからも出しましょうってずっとお誘いを受けてたんです。で、ヨシモトブックスさんから本のお話をいただいたので、そういえばと思って提案しました。

三島達矢(以下、三島):最初は、現代用語を和風に変換する“がりず言葉”を当てる検定のような本でどうですかって言われた気がします。けど、さすがにそれだけやと成り立たんやろうということで、こういうかたちになったんです。

——本著では用途に合わせた例文がいろいろと掲載されていますが、その例文もお2人で意見を出されたり?

南條:そうですね。東大マンさんが基本となる例文を作ってきてくれたものに、僕らは細かいところを入れていく感じやったんですけど、実は言葉を使っている時代がバラバラだったりしまして。普段、僕らがネタで使っている言葉も、正式なものではないので、バランスをとるのが難しかったですね。

——具体的な例を挙げるとするなら、どんなことですか?

南條:例えば「やっと授業が終わりけり」っていうのは文語体で、口語やとそんな言い方はしない、みたいなことですかね。あと、ネタで使っている言葉は響きの面白さを重視しているところがあるので、本来の古文の文法を改めて知って、使い方が間違っていたなぁと思うことがあったり、勉強になったりしました。読んでくださる方も、この本は古文に興味を持つ入り口くらいの気持ちで手に取っていただけたら。勉強に役立てようとすると間違った覚え方をする可能性もあるので、雑学本的なイメージで手に取っていただきたいですね。

三島:それでいうと、こういう本を出しますっていう告知を出した時、仮の表紙イラストを載せたら、いろいろとご指摘をいただいてしまったんですよ。

——それはどんなものだったんですか?

三島:鼓の紐の結び目が違うとか、着物の襦袢の合わせ方が違うというような意見をたくさんいただきまして……。正しいことを伝えるのはもちろん大事なんですけど、あくまで僕らは“狂言風”なので、楽しんでいただくことをいちばんに考えていきたいなと思ってます。

東大マンさんの頭がよすぎて……

——そういう意味でいうと、この本にはお2人の遊び心が散りばめられてますよね。例えば、「番外編 すゑひろがりず裏話」は日常の要素が満載ですし。

南條:この辺りの例文も、東大マンさんが事前に考えてきてはくれたんですけど、打ち合わせの段階で「揉みましょう」「一旦、すべてを考え直しましょう」ってなったものもありました。

三島:東大マンさんは「こういう仕掛けで、こういうお笑いになってます」って説明してくれるんですけど、頭がよすぎて僕らが理解できなかったといいますか。

南條:なんせ東大出身ですからね。舞台に立ってる感覚やと伝わりにくかったり、正しい言葉を使うと面白さが半減してしまったりするところがあったので、如何に正しい知識を入れて、簡単に面白くしていくかを考える作業はだいぶ時間がかかりました。例えば、「其の五 年中行事で使える がりず流和風会話」のハロウィンなんて、まさにそう。

——「トリック・オア・トリート!」を、和風に表現しているものですね。

南條:僕らだったら「振る舞ひ」という言葉は使わなかったと思います。

三島:トリックといわれても、僕らはタネとか手品くらいしか思い浮かべられないですけど、東大マンさんは“戯れ言”っていう言葉が出てくるのがすごいと言いますか。

南條:なぜこういう表現になったかは注釈でちゃんと説明されているので、難しくてついていけないなと思った方は、そこを読んでいただけるといいのかなと思います。

——実際のハロウィンで、「戯れ言か振る舞ひか!」って言ってる人が現れたら面白いですね。言葉って流行ったものが残っていくところがあると思うんですけど、例えばこの本に出てくる“ゆかし”はいろんな使い方ができる分、現代でも流行りそうだなと思いました。

南條:たしかに! ゆかし、いいですね。

三島:この本の中では違う意味で使ってるんですけど、“いみじ”もいろんな意味があるらしくて。やばいに使い方が似てるので、イケるかもしれないですね。

——で、生放送で言ってみたりして。

三島:あぁ、いいですね。それ、いただきました。

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