急展開を見せる『怪獣8号』 絶望的な状況にのぞく希望と、作者の人間観を分析

 『怪獣8号』(集英社)の第4巻が発売された。松本直也がマンガアプリ「少年ジャンプ+」で連載している本作は、自然災害のように怪獣が大量発生している世界を描いた怪獣漫画だ。

 舞台となるのは怪獣の発生率が多いことから“怪獣大国”と呼ばれている日本。幼い頃に自分の暮らす町が怪獣によって破壊された日比野カフカは幼馴染の亜白ミナと二人で「怪獣を全滅させよう」と誓う。その後、ミナは日本防衛隊に入隊し第3部隊隊長として活躍。一方、32歳となったカフカは試験に落ちた後、怪獣清掃会社で働く日々を送っていた。

 しかし入隊試験の年齢制限が引き上げられたことで一念奮起。後輩の市川レノと共に試験に再チャレンジしようと決意するのだが、その瞬間、謎の怪獣が体内に侵入し、人間の心を持ったまま人型怪獣に変身する身体に変わってしまう。怪獣化したカフカは“怪獣8号”と命名され、防衛隊に追われる身となるが、それでもカフカは正体を隠して試験に挑戦。同じ頃、カフカと同じ人型怪獣が続々と姿を現しはじめる。

 物語は『ウルトラマン』や『仮面ライダー』のような正体を隠して戦うヒーローモノの要素と、特殊なスーツと武器を用いて怪獣たちと戦う防衛隊員たちのチームバトルモノの要素が融合したものとなっている。また、カフカが仲間の防衛隊員たちと切磋琢磨しながら成長していく姿は学園ドラマ的。小出しにされる怪獣にまつわる謎も魅力的で、とにかく隙のない作りだ。

 作画に関してもそれは同様で、巨大怪獣が襲来する様子は特撮映画的なリアルなスペクタクル感があり、防衛隊員たちのアクションシーンはケレン味たっぷりで漫画ならではの良さがある。カフカたちの日常や怪獣のいる世界を一枚絵で描いた「怪獣百景」や見せ場となる場面で用いられるカラーイラストもハマっている。

 第4巻が発売された時点で、電子書籍も含むコミックスの累計発行部数は400万部を突破。ネットユーザーが投票する企画「次にくるマンガ大賞2021」のWEBマンガ部門でも第一位を獲得しており、その勢いはとどまる所を知らない。

※以下、単行本第4巻のネタバレあり。

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