『チェンソーマン』藤本タツキの漫画はなぜ読者を魅了する? “展開で読ませる”作家性を考察

 インターネットへのアップを皮切りに大きな話題となった『ファイアパンチ』も、まさに真新しさの連続だった。再生する自身の肉を分け与え生活する様子が描かれた衝撃の第一話や、巻を追うごとにコロコロと変わる作風。作品の根幹となる氷の魔女が世界を氷河期にした目的が明かされた時、思わず驚きの声をあげてしまった読者も多いだろう。“漫画は面白ければ何でもありだろ”と言わんばかりの展開で繋ぐ本作には、漫画家にもファンが多い。

 また藤本は学生時代から数多くの読切を発表しており、アルバイトをせず賞金で生活していたことでも有名だ。過去のインタビューでは中学生の頃から脳内で7本ほどのオリジナル作品を同時連載していたとも語っている彼。つまり藤本は昔から無類の漫画好きであり、多くのセオリーに触れてきたからこそ逆を突く形で誰も見たことが無い新展開を打ち出せるのだろう。

 才能に溢れる若手漫画家のイメージが強い藤本タツキだが、彼の人を惹きつける漫画を描く能力の高さは“天才”の一言では片付けられない。藤本自身の漫画に触れてきた数と創作物への熱意が、彼の作品を真新しさの光る名作へと押し上げているのだ。少年層のみならず20代や30代も読者対象とする「少年ジャンプ+」にて、連載が予定されている「チェンソーマン第二部」。次は藤本がどのような新しい風を巻き起こしてくれるのか、期待せずにはいられない。

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