『チェンソーマン』藤本タツキの漫画はなぜ読者を魅了する? “展開で読ませる”作家性を考察

 2016年に『ファイアパンチ』で衝撃の連載デビューを飾り、その後も話題作を発表し続ける藤本タツキ。「少年ジャンプ+」に掲載された読み切り作品『ルックバック』が大きな話題となったことも記憶に新しい。藤本自身が「僕の作品は、ひと通り漫画読んで飽きた人が読んでいる気がします」と語った通り、彼の作品の持ち味は漫画好きを唸らせる予想外のストーリー展開だろう。なぜ藤本の描く世界観は読者を魅了するのか。その根底には彼が抱く漫画への愛と、ある信念があった。

 2021年2号で連載を終了した藤本の代表作『チェンソーマン』も、アニメ化や第2部の連載が決定している大人気作だ。過激な描写と息もつかせぬスピード感が持ち味の本作を世に送り出した藤本は、「少年ジャンプ+」が開催している企画「MILLION TAG(ミリオンタッグ)」内で参加者にアドバイスを送っている。その中で語った「ネームとか話し作りに関してキャラのことはあまり考えない、展開重視」、「キャラが壊れてもいいから次のページを開かせる努力をする」という話には、彼の作家性が色濃く表れているように思う。

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 『チェンソーマン』も第1話のデンジがバラバラにされる描写から、アキが迎えた結末まで、キャラが悲運の途を辿る驚きの展開の連続だった。藤本がキャラを第一に考える作家であれば、本作ほどの衝撃作は生まれなかっただろう。漫画の登場人物に感情移入しながら、作品を楽しむ読者も多い。そしてそうであればあるほど、キャラが予想外の展開に巻き込まれる方が読者にとっての驚きや感情の揺さぶりは増え、漫画は面白くなるのだ。彼のキャラクターを大切にしながらも展開を最重要視する考え方が、『チェンソーマン』が人気作になり得た要因であるように感じた。

 ジャンプルーキー!の編集部ブログにて、藤本は自身の作品の展開の秀逸さについて「多分、沢山映画を観て、漫画を読んでいると、絶対このあと、こうなる!って展開がありますよね。それだけは絶対避けよう、って思っているからかもしれないです」と話した。また『ファイアパンチ』連載時にアシスタントをしていた賀来ゆうじは、自身と藤本の好きな作品について「僕たちは作品を評価する時の基準のかなり大きい部分が、『他の作品と違う感覚』とか『新しい見せ方』っていうところに占められています。『こんなの見たことない!』っていうものを見た時の喜びが大きいんです」と語っている。

 人は家電や食べ物など新しいモノが好きだが、それは創作物でも相違ない。漫画に関わらず創作物の面白さにおいて、「真新しさ」は極めて大きい要素だ。予想外の角度から知覚を刺激するモノは、人の興味をそそり気分を高揚させる。そして過去の藤本作品を思い返せば、新しさを追求する信念が伝わる展開が多く存在した。

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