橘ケンチ&中務裕太が語る、日本酒のお洒落な楽しみ方「たまにはジャケ買いも楽しい」
橘ケンチ(EXILE/EXILE THE SECOND)が企画原案を担当したマンガ『あらばしり』の単行本が8月6日に発売となる。本作はイケメンに擬人化した日本酒たちが、個性的な女性客たちの悩みを解決していくというもの。少年マガジン公式無料マンガアプリ「マガジンポケット」で昨年の12月から連載が始まった話題作が、いよいよ本屋に並ぶとあってファンの期待が高まっている。
さらに本作には「スペシャルフォトブック『KENCHI TACHIBANA×YUTA NAKATSUKA』」と題し、橘とGENERATIONS from EXILE TRIBEパフォーマーの中務裕太が酒蔵を訪問した模様を収めたミニ写真集も付属。様々な切り口で楽しめる作品で新たな日本酒シーンの開拓を目指す。
今回は念願となる『あらばしり』の単行本化についてはもちろん、これからの展開や構想、さらにライフワークである日本酒の啓蒙活動の現在に至るまでを、橘と中務のふたりに語ってもらった。
橘ケンチ「説明は付けた方が楽しんでもらえる」
――『あらばしり』の第一巻の発売おめでとうございます。おふたりはマンガに同梱されるスペシャルフォトブック『KENCHI TACHIBANA×YUTA NAKATSUKA』でご一緒されていますが、以前から日本酒を通じた親交があったのでしょうか?
橘ケンチ(以下、橘):裕太も前から日本酒が好きだったので『あらばしり』の企画会議に彼も来てもらったりして、一緒に日本酒を飲むことは多かったです。
中務裕太(以下、中務):僕は企画の提案をするというよりは、日本酒について「こんな味がしました」と感想を話した程度です。だから味の感じ方を勉強しながら、ケンチさんたちのお話を横で聞いていた、という感じでした。ケンチさんの好きなお酒はスッキリというより、少し力強さがあるものなんですよね。
――マンガにミニ写真集が付く、というのもなかなかユニークな試みですよね。
橘:普通に単行本を出すのも良いですが、僕らが関わった時に応援してくれる方々にも楽しんでもらいたいんです。マンガだけでなく、新たな切り口も提案したいとも思っていて。プロダクトに付随して説明をつけたり写真集を付けるのは良い表現の仕方だと思っています。
特に説明は付けた方が楽しんでもらえる確率が高くなると思っています。もちろん個人の選択にはなりますが、味わってからの広がりが期待できるので、選択肢を多く提示しておきたいなと。コラボ日本酒を作る時も毎回パンフレットを付けていて、造りの様子や思いを伝えています。
――おふたりでの酒蔵訪問の感想も知りたいです。
橘:あの時は裕太にとって初の酒蔵訪問だったので、彼のファーストインプレッションの表情がばっちり収まって、素敵な仕上がりになったと思います。
中務:全部の写真で目がキラキラしていましたね(笑)。「酒蔵すげえ」と感激しながら、いつかは自分の蔵を作りたいなとも考えていました。
――「あらばしり」の連載を実際に読んでみていかがですか?
中務:自分の好きなお酒が擬人化してストーリーが展開するのは、子ども心を思い出すようで楽しく読ませていただいています。
橘:「日本酒のことを知ることができて勉強になります」とか「日本酒を飲んでみたくなりました」など、嬉しい反応をいただいています。連載は去年の末から「マガポケ」アプリ内でスタートしましたが、書籍として本屋に並ぶと多くの方の目に付くと思うので、期待できるんじゃないかなと。あとは僕も個人的に本が好きでしたから、作品が実際にプロダクトとして手に取れるのは嬉しいことです。
――おふたりが気に入っているシーンなどがあれば教えてください。
橘:作品では日本酒の銘柄たちが擬人化して、訪れる人の悩みを解決するのがストーリーの屋台骨になっていて、クセのあるお客さんに主人公の吟が接していきます。もちろんそこも注目なのですが、イケメン君たちがわちゃわちゃしている場面が今後も増えていくと思うので、感情移入しながら読んだり、推しキャラも見つけていただきたいです。
中務:お気に入りのキャラは見つけてほしいです。見た目もあるだろうし、性格もそれぞれですから、そこから日本酒にハマってもらえたら。
橘:色々な楽しみ方があると思うので、それぞれの視点を発見してもらえたら嬉しいです。
――それぞれのお気に入りのキャラも気になります。
中務:「加茂錦」は前から好きだったので、キャラとして登場した時にテンションが上がりました。僕は「しっぽりいきましょう」というタイプで、わちゃわちゃ飲むのは得意じゃないんです。だから赤武の「多くを語らずにまずは飲め」というキャラはとても好きです(笑)。お酒として好きなのは「村祐」ですね。企画会議で初めてペアリングとして飲んだら、めちゃくちゃおいしかったです。
橘:マンガを作るに当たって、真ん中にいたキャラは「一歩己」だったんですよ。3年前くらいに初めて飲んだ時はすごくフレッシュでおいしいイメージでした。お店の人が「福島の若い人が作っているんですよ」と教えてくれたのも強烈に印象的で。「一に歩く己」という名前もまた良いなと。登場人物としても名前映えするんですよね。色々な視点で精査していった結果「一歩己」は一番バランスが取れていて物語の中心に置けそうだなと思いました。
――擬人化した日本酒たちのセクシーな描写も魅力的です。
橘:「カッコいい男性がセクシーに日本酒を飲む」というのはひとつのテーマだったんです。日本酒は「おじさんが晩酌で飲んでいる」というイメージが強いと思うんです。でも、今ではワイングラスで飲んだり、熱燗よりも冷やで飲まれることが多くなっています。
中務:確かに泥臭いイメージはいまだにあるかもしれません。でもあのマンガを読むとスタイリッシュで「日本酒を飲んでいる人はカッコいいな」と思えます。まさに若い方に届く描写になっている。あのカッコよさはたくさんの方に気付いてほしいです。
橘:カルチャーとして「日本酒がオシャレ」という雰囲気を作っていけたら良いですね。その観点で、ぜひ男性にも読んでいただきたいです。
――また1巻で店を訪れる女性は、編集者や渋谷で働くギャル風の若者、食器メーカーの社長とユニークな人ばかりでした。こういう設定にはどんな狙いが?
橘:日本酒をイケメンにする、というコンセプトが浮かんだ時に、女性の読者が多くなるかもしれないという想定がありました。なので、訪ねてくるのは女性を多めにしようという話は元々あって。それぞれ社会で活躍しつつも何かの課題を背負っている人物を登場させたら、ああいうキャスティングになったんです。
中務:もはや最初のお客さんが登場したのが半年前ですから、懐かしいなと感じます。やはり編集で悩んでいる人には飲みやすいお酒を飲んでほしいです。「新政」の甘さで落ち着いてもらえたら。
――擬人化させる技術に「幻想上槽」と名付けたネーミングセンスが見事でしたが、こちらはどの様に着想を?
橘:あれは紀さん(共同原案の平沼紀久)が命名しました。日本酒を造る時には色々な工程があるので特殊な用語が多いんです。「上槽」もそうですし「蒸米」とか業界の人には分かるけど、一般の方には馴染みのない言葉ですよね。
「上槽」は「お酒を絞る」という意味で、その言葉を擬人化させることにかけているんです。でも実際に「幻想上槽」ができたら困っちゃいますね。だって、酒屋さんに行ったら、お酒が片っ端から擬人化してしまうじゃないですか(笑)。男性ではなく、女性になるということもあり得るかもしれません。
中務:女性に「幻想上槽」させたいです(笑)。
――「酢鶏」や「水ナスのカルパッチョ」など意外性がありつつ、キャッチーで魅力的な料理も印象的でした。
橘:LDH kitchenのスタッフに協力していただいて、何となくのイメージを伝えてから形にしてもらいました。それから企画会議の時点でお酒と合わせながら、ああだこうだと意見を出し合って完成したんです。