【画像たっぷり】ギア付き自転車など“昭和あるある”が盛りだくさん! 『山田全自動の懐かしあるある』の絶妙なさじ加減
ちゃんとウケるあるあるネタを作ることができるというのは、結構難易度の高い技術である。誰もが知っており、しかしなんとなく記憶から抜け落ちていて、それでいてネタを出されたら「あ~!あったな~!」となる……。条件だけ並べていくと、それなりにめんどくさそうだ。マイナーすぎて引っかかる人が少なくてもダメだし、かといって「そんなもん、もう知っとるわ」と言われてしまってもダメである。
その点、『山田全自動の懐かしあるある』(辰巳出版)は絶妙だ。この本は、江戸時代の町人風のイラストであるあるネタを描くことで人気の山田全自動が、昭和時代の子どもたちのあるあるネタをまとめた一冊。題材はアイス、ジュース、お菓子、即席めん、小学校、文房具など、誰もが一回は触れたことがある上に、時代による変化の激しいものばかり。イラストに合わせ、それらの実物を写真入りで紹介するコラムも掲載されている。(編注:同書は、辰巳出版の「日本懐かし大全シリーズ」と全面コラボしたもので、数多くの懐かしアイテムが多数取り上げられている)
問題は、このあるあるネタの粒度というか、あるある度合いだ。なんというか、そんなにピーキーなあるあるネタではないのである。おれは昭和62年生まれなので、世代的には昭和あるあるはいまいちよくわからない年齢なのだが、そんなおれでも「あ~、あったらしいですね!」「これは平成初期にもあったんで、おれも知ってますね!」となるネタが多いのだ。
一例を挙げると、「車のギアみたいな切り替えの自転車に憧れる」というイラスト付きのネタに合わせて、昭和のフラッシャー自転車が紹介されているページがある。いや、わかる。おれでもわかりますよ、これは。だってチャリの変速機が車のギアみたいな見た目で、おまけにライトもたくさんついてたらカッコいいもん。ほしいよね、そんな自転車。で、重要なのは、このネタがここで「以上、終わり」と完結しているところだ。例えば「実際にフラッシャー自転車に乗っていた人間にしかわからないあるあるネタ」とか、「フラッシャー自転車を売っていた自転車屋のオヤジにしかわからないあるあるネタ」ではないのがポイントである。
要するにこの本、「あるある~!」と共感するために要求されるリテラシーが、徹底して浅めなのだ。これは別に『懐かしあるある』だけではなく、山田全自動の描くイラスト全体に共通していることだと思う。あるジャンルに詳しい人間にしかわからないニッチなあるあるではなく、世の中の多くの人が「あるな~」と思えるバランスにチューニングされているのだ。