『シティーハンター』冴羽獠と槇村香の純愛 結ばれそうで結ばれない愛の物語を振り返る
宝塚歌劇団の公演が決定するなど、人気が再燃しつつある『シティーハンター』。その人気の秘密は様々なもの挙げられるが、その一つに冴羽獠と槇村香の「くっつきそうでくっつかない」歯がゆさがある。そんなシーンを2人のラブストーリーを振り返ってみたい。
変装した香と冴羽がデート
友人の北原絵梨子にそそのかされ、豪華な服を着たうえ、ウィッグをつけて別人になった槇村香。その美しさは誰もが振り返るもので、多くの男に誘われる。香は逃げていたが、バーに行くとキザな男に出会い、睡眠薬を入れた酒を飲まされそうになった。
そこを救ったのが、北原に呼び出されていた冴羽。香は自分に気がついていないことを感知すると、「約束をすっぽかされた」と嘆き、自らをデートに誘う冴羽に乗り、「一度でいいからガードされる側になってみたかった」と喜ぶ。全ては、北原の策略だったのだ。
デートを楽しむ香だが、次第に「香として見られていないこと」に葛藤を感じる。そして、ディスコで冴羽から「細くくびれた腰」「豊かな胸」と褒められたことに、「いつも豊かなくびれ、くびれた胸だってバカにしているのは誰だ」と怒り、ハンマーを振り下ろしてしまう。
それでも冴羽は香を別人として扱い、港へ。香はホテルへの誘いを「12時にあの船に乗って留学に行く」とウソをつき、逃れる。冴羽は「お別れのキス」をしようとするが、香は「獠に自分と思われずにファーストキスされるのは嫌」と感じ、冴羽はキスをやめる。結局香は走り去ってしまった。
後日、北原に顛末を話す香。「借りていたイヤリングを落としてしまった」と謝罪すると、「何言っているの、ジーパンのポケットに入っているものは何?」と北原。冴羽は、全てを知っていたのだ。(24巻)
このエピソードはアニメでも放送され、2人の「くっつきそうでくっつかない」を如実に表している回として人気が高い。
香に愛を告げたつもりが……
アメリカからやってきた冴羽獠の「マブダチ」ミック・エンジェル。家に上がり込んできた彼の目的は、「獠を消す」というものだった。
ミックは任務遂行のため香を口説くが、徐々に惹かれ、本気になってしまう。「惚れた」と宣言され悶々としていた冴羽も「香には手を出すな。友に託された大事な預かりものだ。お前のような男に渡すわけにはいかない」とシリアスに反論する。
一方香は、冴羽を守るためミックに決闘を申し込む。ミックは「君を愛している」と告白するが、香は喜びつつもミックに襲いかかる。その後冴羽は香に決闘を止めさせたうえで、ミックに勝負を挑む。
すると香は決闘の場所であるビルを爆破する起爆スイッチを持ち「獠が負けたら押す」「生きるも死ぬもともにするパートナーだもの」「あたしたち2人でシティーハンターだっていったのは、ずっと誕生日を一緒に過ごしてくれるっていったのはどこの誰なのよバカ」と叫び、泣く。
香の様子に心を打たれたミックは冴羽との決闘を前に敗北を認め「俺の負けが決まっていたのは、香くんに本気になったときからだろうな」と嘆く。冴羽はこれまで香に持たせていた照準のずれた銃ではなく、しっかりとした銃を手渡す。
そして「この銃で人を殺すようなことはさせない。それがお前をこんな世界に引き込んだ俺のせめてもの、俺のお前に対するあ…だ」と告げる。初めて愛を明言した冴羽だったが、香は「聞こえなかった」と聞き返す。
しかし香は起爆スイッチを落としてしまい、爆発。建物が崩れてしまった。結局「あはは、死ななくてよかったねー、これがほんとうのオチ」と香が笑い、ロマンチックなモードはなくなってしまった。(32巻)