古生物のビジュアル盛りだくさん! 『ダーウィンが来た!』敏腕ディレクターが迫る”生命大進化の系譜”

月が演出した最初の動物上陸

 2004年に放送したNHKスペシャル「地球大進化」では、3億6000万年前ごろのデボン紀に四足動物(テトラポッド)が川にいて、淡水域から上陸を果たしたと紹介されている。この説は現在も有力だが、2010年に新たな上陸ストーリーが出てきた。

 従来の説よりも3000万年以上も古いデボン紀前期末(3億9500万年前)の地層から、テトラポッドの足跡が発見されたのだ。この最古のテトラポッドは推定全長2〜3メートルで、オオサンショウウオのような姿だと考えられている。こうした大型動物が海の王者であるダンクルオステウスよりも古い時代にもう出現していたのだ。この発見に基づけば、私たちの手足は従来の考えよりも3000万年以上も早く進化していたことになるという。

テトラポッド 画像提供:NHK
テトラポッド 画像提供:NHK

 
 デボン紀の当時、月は今よりも地球に近かったと言われ、例えば干満の水位差が5〜6メートルの場所であれば当時は10メートル以上にもなったと考えられている。この満ち引きによって陸地に取り残された魚に目を付けたのがテトラポッド。日光(紫外線)の影響がない夜に上陸をしていたと考えられている。

 このような行為を長い年月の中で繰り返し、次第に陸上へと適応。陸上生活に適応した脊椎動物が誕生していったのである。

いよいよ恐竜の出現

 恐竜が出現する三畳紀(中生代)の前、古生代最後のベルム紀(2億9800万年〜2億5000万年前)に生息し、単弓類は母乳での子育てを成し遂げ大繁栄していた。しかし、ベルム紀末(2億5000万年前)にP/T境界の大量絶滅が起きる。破格の噴火活動が100万年も続き、気候変動、生物にとって必要不可欠な酸素濃度が激しく低下したと言われており、これにより陸上生物の7割が絶滅したとされる。その多くが単弓類だったという。

ゴルゴノブス 画像提供:NHK

 時代は三畳紀(ここから中生代)に入るが、ここで単弓類に変わり幅を利かせたのが爬虫類だった。そして三畳紀末、まだ爬虫類たちの軍団が群雄割拠していた世界で出現した最古の恐竜の一つがコエロフィシスである。コエロフィシスは全長3メートルほどで、スリムな体ですばやく移動し、小動物などを捕食していた。最近の研究に基づけば、全身に羽毛を生やしていた可能性もあるという。

コエロフィシス 画像提供:NHK

 三畳紀後期、世界は乾燥化が進んでいたらしい。その中で恐竜は乾燥に適応した体つきをしていた。それが直立二足歩行だった。それが長距離移動にも有利で、また前脚「手」がフリーになることで、カギ爪を生やし獲物を捕らえるようになるなどの利点が生まれ、恐竜成功のカギの一つになったと考えられている。

 もう一つ、中生代の生物進化を考える上で欠かすことのできない重要な動物が、人間の属する動物グループ、哺乳類だ。アメリカのニューメキシコで発見されたわずか1.5センチの頭蓋骨の一部は、哺乳類の起源を数百万年も遡る貴重な化石だった。アデロバシレウスと名付けられた推定全長10センチ前後のネズミのような動物が、最古の哺乳類とされている。私たちの祖先はこの後、恐竜とともに優に1億5000万年以上もの時間を共有していく。

アデロバシレウス 画像提供:NHK

 地球が誕生して46億年。海が小さな生命を育み、進化の過程で、ある者は陸に上がり進化を続けた。こうした途方もなく長い歴史を経て、2億年以上前に恐竜が出現。時間の割合で言うと、地球ヒストリーのほとんどの部分は恐竜以前ということになる。そして6600万年前に恐竜が姿を消し、ついに「ほ乳類の時代」が幕を開ける。この大いなるロマンは、今夏発売予定の第2集へと続く!

■書誌情報
『ダーウィンが来た! 生命大進化 第1集 生き物の原型が作られた(古生代〜中生代・三畳紀)』
著者:植田和貴
編集:ナショナル ジオグラフィック
発行:日経ナショナルジオグラフィック社
定価:1800円+税
発売日:発売中

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