『美味しんぼ』山岡士郎に学ぶ”鈍感力” 栗田ゆう子との結婚に至った道筋を考察
数々の際どい発言にも…
42巻では、山岡の鈍感ぶりが顕著になっている。小野と橋田つた子の仲を取り持って帰る際には、山岡が「俺は女性に優しいのが欠点でね」と話すと、栗田が「へえ、優しくしなければいけない人を忘れてはいませんか?」と話すが、「へえ俺がかい?」とトボける。
さらに癖が強い小説家志望の多里と栗田の友人鳥辺の仲を取り持ったあとも、栗田が「特ダネ賞もらえるわね。全額新婚旅行に積み立てしよう」とつぶやくが、山岡は「全額? 俺の分はどうなるんだ?」と真顔で抗議した。
甘味処を救う話でも、東西新聞社から女性と歩く山岡を尾行し、休業にもかかわらず店に押しかけてきた栗田に、山岡は「あれれ、君たち、なんで僕がここにいるのがわかったの?」と真意を読み取れない。
店主の男性が「馴染みの店に行ったら山岡さんがいて…」と話すと、栗田は「ひとりでした?」と食い気味に質問する。これも自らへの好意の裏返しだが、「?」という反応だった。
鈍感男ではなかった?
鈍感ぶりを見せ続けた山岡だが、42巻の最後で団社長と山岡、栗田で食事をした際、団社長から「僕と近城カメラマンがプロポーズをしたら山岡さんは中立を守ると言ったそうな」と告げられ、栗田が露骨にムッとすると、目線を下に向けて冷や汗をかいている。山岡が本当は全てを知っていて、あえて気が付かないふりをしていた可能性をうかがわせた。
そして43巻で栗田に「俺は両親のことで結婚なんてものに疑いを持っていて、君のことを、ええと…、あの、ずうっとあれだったんだけど…、それが言えなくて…」と話している。この発言を見ると、「鈍感男」というわけではなかったように思える。
山岡士郎は「鈍感男」だったのか? 栗田ゆう子は「世界一の鈍感男」と称しているが、実際はそうではなかった可能性も否定できない。真相は、山岡士郎のみぞ知る。