『アンデッドアンラック』作者はキャラクターと共に戦っている バトルに込められた“漫画”への想い
『アンデッドアンラック』(集英社)は戸塚慶文が「週刊少年ジャンプ」で連載しているSFテイストの異能バトル漫画。
死なない体を持ったアンデッド(不死)のアンディと、肌に触れた人間に不幸をもたらすアンラック(不運)の出雲風子は、「否定」の力を持った円卓の否定者達と共に危険な課題(クエスト)に挑むことになる。
以下、ネタバレあり。
第6巻ではアンディと風子が、未来予知の力とGライナーというペンを使うことであらゆるものを具現化する力を持った漫画家・安野雲と共闘する場面が描かれる。
人を本に変え「人生を食べる」蜘蛛の様な怪物(UMA)・オータムを倒す力を得るため、安野はアンディを本に変えて、風子の魂をアンディの過去へと送り込む。不死ゆえに仲間との死別を繰り返してきたアンディの悲しみを知った風子は、やがてアンディの一番古い記憶「1865年4月15日のワシントンDC」の世界へと向かう。そこで待ち受けていたのはアンディの主人格・ヴィクトールだった。
ヴィクトールに殺された風子は本のページをめくるように次の時代へと向かい、その度にヴィクトールに殺され、最終的に風子がアンディと出会った「2020年8月1日の新宿駅」に到着する。そこにアンディが現れヴィクトールと戦うことになる。
「はるか昔から風子と出会っていたら」という「もしも」の記憶を獲得したアンディはパワーアップし、今までとは違う「不死」の力の使い方でヴィクトールを圧倒し、風子の「不運」を込めた体の一部(指先)を飛ばして敵にぶつける不運弾(アンラックバレット)でヴィクトールを倒す。
アンディと風子の新しい戦い方に「進化の予兆」を感じとったヴィクトールは考え方を変えて、2人のことを認める。
一方、現実の世界では、アンディ達と敵対する否定者組織「アンダー」のリップが、安野雲を襲撃していた。アンディと風子を守るために傷だらけになって戦う安野は過去のことを思い出していた。安野こと九能明は、ある日、Gランナーを拾ったことで、彼の脳内には現在の世界の「過去」と「未来」の記憶が流れ込んできた。同時に九能は否定者に選ばれ、誰からも認識されない存在へと変わってしまう。
否定者となった九能は孤独に陥るが、記憶の中で見た“アンディ”と“風子”のように能力から逃げずに「描くこと」で戦おうと決意し、安野雲というペンネームで『君に伝われ』という恋愛漫画を投稿。九能明と繋がることさえ描かなければ自分の存在を知ってもらえるというルールの抜け道に気づいた安野は、長編漫画を連載する人気作家となる。
その後、流れこんできた物語は事実ではないかと感じるようになった安野は、アンディが居合を習うために日本に滞在している時期に彼がいる山奥へと向かう。そこでアンディの存在を確認した安野は否定者たちが戦う物語(つまり『アンデッドアンラック』の物語)が未来を予知した記憶だったことに気付く。しかし記憶の通りに物事が進んでいけば、アンディたちは敗北することになる。安野は『君に伝われ』のストーリーの中に未来の情報を紛れ込ませることで円卓の否定者たちにメッセージを送ろうと考える。
現実に帰還したアンディは、風子を襲おうとした「不可視」の否定者・ショーンを倒す。安野の目的は「風子の死」を防ぐことだったのだ。その後、アンディと風子は、安野の力で元の体を取り戻したリップ率いるアンダーと共闘してオータムを倒す。だが、力を使い果たしペンが折れたことで(実はペンで具現化させた分身だった)安野の肉体は消滅してしまう。