『古見さんは、コミュ症です。』の少女漫画的な魅力とは? 友達づくりの物語が描き出す、ピュアな感情

あったかくも甘酸っぱい時間

 「かわいらしい一面」とひと口に言ったが、そこは当世流の少女漫画ではなかなか描かれないものでもある。確かにギャップ萌えは、キュンの常套手段。しかしコミュニケーション不在で、女子にとってのキュンありきのシチュエーションの羅列に走りがちな少女漫画も多い中で、少年漫画であるはずの本作こそがむしろ不器用でピュアな発見と認識の積み重ねを描き出す。それだけに優しくもじれったくて、あったかくも甘酸っぱい時間が流れる。

 そうは言ってもどのキャラクターもバイタリティが高いうえ、ギャグもパワフルで、そんなところは少年漫画。2021年5月時点の最新刊21巻では、2年生となっての修学旅行や年末年始の様子がユーモラスに描かれる。アニメ化も決まって、10月にはTVシリーズ放送開始。間違いなく、今おすすめの〈少女漫画〉は『古見さんは、コミュ症です。』だ。

■渡辺水央
ライター。映画、コミック、アニメーションなどのエンタテインメントについて執筆。『キャラクター』(6月11日公開)などの宣伝ライティング・劇場パンフレットも手掛ける。

■書籍情報
『古見さんは、コミュ症です。(21)』
オダトモヒト 著
定価:499円(税込)
出版社:小学館

関連記事