『ONE PIECE』ルフィの器の大きさは善悪で測れないーーホールケーキアイランド編の名シーンを分析

 「週刊少年ジャンプ」で尾田栄一郎が連載している漫画『ONE PIECE』(集英社)は、海賊王を目指す少年・ルフィが麦わらの一味の仲間たちと共に冒険の旅に出る海洋ファンタジーだ。1997年から連載がスタートした本作は、現在98巻まで刊行されている長編漫画で、80巻以降の物語は「四皇編」と言われている。

 四皇とは新世界を牛耳る四人の海賊のことで、今回紹介する82巻末から展開されるホールケーキアイランド編では、四皇のビッグ・マム(シャーロット・リンリン)率いるビッグ・マム海賊団と、ルフィたち麦わらの一味の熾烈な戦いが描かれている。

以下、ネタバレあり。

 モモの助を大将とするワノ国の侍たちと同盟を組んだルフィたちは、ワノ国を支配する四皇の1人、百獣のカイドウと戦うことになる。

 ルフィたちは二手に分かれ、ゾロ、ロビン、ウソップ、フランキーは、トラファルガー・ロー率いるハートの海賊団と錦えもんたちワノ国の侍たちと共にワノ国に先に向かう。一方、ルフィ、ナミ、チョッパー、ブルックはミンク族のペコムズ、ペドロ、キャロットと共に仲間のサンジを救出し、「ひとつなぎの大秘宝」(ワンピース)が眠ると言われる「ラフテル」へ向かうために必要な「歴史の本文」(ポーネグリフ)を手に入れるため、ビッグ・マムが支配するホールケーキアイランドへと向かうことになる。

 『ONE PIECE』はルフィたちが訪れる島(国)ごとにエピソードが分かれており、話が進むに連れて物語のスケールが大きくなり、登場人物も増加していく。そのため、話がどんどん複雑化しているのだが、このホールケーキアイランド編の序盤は、サンジに焦点が当たっているため、とても読みやすい。

 麦わらの一味のコックとして活躍してきたサンジだが、実は彼の正体は国土を持たない海遊国家・ジェルマを治めるヴィンスモーク家の王子だった。だからこそビッグ・マムの娘・プリンとの政略結婚の相手として連れ去られてしまったのだが、そこで明らかになるのがサンジの辛い過去。

関連記事