王道スポ根漫画『アイシールド21』の魅力は“頭脳戦”にあり 作中きっての“頭脳派”プレイヤーを考察

雪光学

 幼少時から運動が苦手で勉強一筋、泥門加入後もスタメンの座を奪えなかった男。それが雪光学だ。2年生から一念発起でアメフトを始めた雪光は、それまで机にかじり付きの人生だった。運動音痴も災いし、遂に関東大会でもバスケ部の助っ人にスタメンを奪られてしまう。そんななか迎えた王城ホワイトナイツ戦。雪光はそのチームを思う実直な気持ちと持ち前の頭脳で、泥門デビルバッツを窮地から救う活躍をみせた。

 王城との試合にて、終了間際に鼻血での一時退場を余儀なくされた瀬那。誰かを代わりとしてフィールドに入れなければいけばくなったヒル魔は、勝利への執念が見えたスタミナ切れの雪光をフィールドに呼ぶ。プレー開始早々進に吹き飛ばされてしまう雪光。そして最後の防衛線にて食い止められる進だが、タッチダウンは時間の問題だ。残り時間は後3秒。立ち上がった雪光が講じた策は、進の背中を押しタッチダウンさせ、時間を1秒残すことだった。まさに執念が生んだ頭脳プレー。雪光が自身の価値を全員の知らしめた瞬間である。

蛭魔妖一(ヒル魔)

『アイシールド21』9巻(集英社)

 ヒル魔は泥門デビルバッツのキャプテンで、言わずと知れた頭脳派だ。本稿のタイトルを見て1番最初にヒル魔の名前が思い浮かんだ人も多いだろう。作中でヒル魔はアメフトに関わらず、数々の天才ぶりを披露している。手でのサインを一瞬で記憶したり、ギャンブルで一瞬のうちに2000万円を稼いだりと、その天才ぶりを遺憾なく発揮したヒル魔だが、運動能力は全くの凡人であった。それでもヒル魔率いる泥門デビルバッツは、全国の頂点に輝いた。つまり本作は裏主人公とも言われるヒル魔の“頭脳戦”を描き続ける漫画でもあったのだ。

■青木圭介
エンタメ系フリーライター兼編集者。漫画・アニメジャンルのコラムや書評を中心に執筆しており、主にwebメディアで活動している。

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