王道スポ根漫画『アイシールド21』の魅力は“頭脳戦”にあり 作中きっての“頭脳派”プレイヤーを考察
いじめられっ子のサクセスストーリーを描いた、ジャンプが誇る王道スポ根漫画『アイシールド21』(集英社)。心・技・体、様々な能力が高いレベルで必要とされるアメリカンフットボールだが、なかでも勝利に欠かせないの要素が「頭脳」だ。作戦を考え、相手の作戦を読み裏をかく。本作にも類稀なる頭脳を用いて戦いを制す、数々の秀才が活躍した。そこで本稿では『アイシールド21』に登場した“頭脳派”を、4人厳選して紹介していく。
金剛阿含
金剛阿含は関東No. 1チーム「神龍寺ナーガ」のエースで、ポジションはWL(ワイドレシーバー)である。高校生らしからぬドレッドヘアーが特徴的で、女性に節操がない性格最悪のキャラクターとして描かれている。性格や外見だけ見るととてもスポーツマンとは思えない彼だが、その強さの源には誰もが羨む暴力的なまでの「才能」があった。
金剛阿含は作中きっての天才プレイヤーだ。練習を全くせずとも超強豪チームのエースの座に就き、身体能力や反射神経も凡人がどれだけ努力しても手が届かない高みへ容易に到達する。感情的な行動が目立つ阿含だがその才能は頭の良さにも及び、作品内では思慮深く相手の心中を読む場面もあった。
関東大会一回戦、本作の主人公・小早川瀬那擁する泥門デビルバッツは、神龍寺ナーガとの試合に臨む。戦況は下馬評通り圧倒的で、一時は32点差を付けられるも、様々な奇策を駆使しながら遂に7点差まで肉迫する泥門デビルバッツ。時間は残り1分。時間をかけながらジリジリフィールドを進む泥門に、神龍寺の選手は安心するが、阿含は何か裏があると踏んでいた。そこで完全に神龍寺の虚を突いた、泥門の奇策が炸裂。レシーバーのモン太にロングパスが通りそのままタッチダウンと喜ぶ泥門メンバーだが、モン太の元に突如現れる阿含。神龍寺の全員が出し抜かれる中、阿含はヒル魔の奇策を全て見抜いていたのだ。
高見伊知郎
高見伊知郎は東京が誇る強豪チーム「王城ホワイトナイツ」の、正QB(クウォーターバック)だ。高見は高身長ながらも才能に恵まれず、入部から長く補欠を定位置としていた。また小学生のときに負った怪我が原因の鈍足により、機動力のあるQBが主流の現代では活躍は厳しいとQBを諦めるよう打診された過去もある。そのなかでも諦めず努力を重ね、努力で伸ばせる能力を目一杯伸ばした高見。その彼の武器は、なんと言っても「正確なパス」と「分析力を活かした頭脳戦」だ。
関東大会二回戦、王城ホワイトナイツ戦にて桜庭と進のコンビに為す術なく、せっかく掴んだチャンスも逃してしまう泥門。そこでヒル魔は2枚のカードを出す。2つのプレーが書いてあると話すそのカードだが、白いカードには“セオリー通りの無難なプレー”、黒いカードには“一発逆転が可能だが失敗すれば負けが確定するプレー”が書かれていると話す。迷わず黒いカードに飛びつく泥門メンバー。
そして試合再開直後、モン太と瀬那は桜庭に高速二重マークに付く。一瞬焦る桜庭だが、長身の桜庭と高見のホットラインにスピードは関係なく、すぐに冷静さを取り戻した。しかし高見のもとに、瀬那が猛スピードで突っ込んでくる。桜庭へのマークはフェイクで、瀬那は発射台を潰すために行動していたのだ。これに予想外な顔をする高見だが、次の瞬間「クッマズい…!! と言うと思ったかい?」と進をブロックに使い、ヒル魔の奇策を先読みした。最後の希望であった瀬那を止められたヒル魔は「畜生…畜生…!!! って言うと思ったか?」と桜庭に付いていたモン太までも高見への特攻に使った。桜庭をノーマークにした高見への特攻がヒル魔の本当の狙いだったのだ。2段階で奇策を仕掛けられ高見。万事休すかと思われたが、高見は「しまっ… なんて言うと思ったかい?」と再度ヒル魔の策を読み切ってみせた。作中最大の頭脳戦とも言えるこの勝負。高見の優れた頭脳と勝利への執念がよくわかる名場面だった。