批評誌『エクリヲ』で「うつ病」と「ポストクリティーク」特集 ポピュラーカルチャーを貫通する“憂鬱”とは?
批評誌『エクリヲ』は、「うつ病」と「ポストクリティーク」を特集した最新号(vol.13)を2021年4月5日に発売する。
第1特集では「鬱の時代へ――失調と回復の哲学」と題し、世界で2.6億人を超える患者数が推計され、現代に蔓延する「うつ病」を特集する。新型コロナ感染症流行は停滞と孤立を人々にもたらし、自殺率や抗不安薬使用が増加しつつある。一方、文化に目を向ければジェネレーションZのアーティストたちが向精神薬やメンタルヘルスについて繰り返し歌い、レトロなリメイク作品が亡霊のように回帰し、SNSのタイムラインは煽動とフェイクで埋め尽くされていく――。精神医療の現在からポピュラーカルチャー(映画、HIPHOP、ゲーム、漫画)を貫通する憂鬱まで、社会や文化が抱える疲弊や不安の現れを通して「21世紀の時代精神」を問う特集となっている。
第2特集では、批判理論の「次」を模索するポストクリティーク実践篇を掲載。前号に掲載した特集ではブリュノ・ラトゥール、イヴ・セジウィックらの訳出論考などから、世界で巻き起こりつつあるポストクリティークの理論動向を紹介したが、続く本特集では実践的な論考を掲載、ポストクリティークの可能性を模索する。SNSの普及に伴い、煽動と対立が繰り返される現代の政治あるいはポピュリズムに対して「情動のデモクラシー」を掲げる宮﨑裕助、ポストトゥルース以降に失われた「フィクション」の可能性を村上春樹の作品群を通じて問う勝田悠紀の論考の他、現代日本の批評とポストクリティークの交差点を巡る大澤聡×杉田俊介の対談を収録。
特集の他にも、全世界2000万部突破の劉慈欣『三体』を扱う楊駿驍による「〈三体〉から見る現代中国の想像力」連載も収録されている。
■書誌情報
『エクリヲ』vol.13
2021年4月5日 発売
定価2,200円+税