『呪術廻戦』伏黒恵、呪術師としてのルーツは? 闇多き中学時代を考察

 「週刊少年ジャンプ」で連載中の芥見下々による漫画『呪術廻戦』。人間の負の感情から生まれる呪霊を、呪術を使って祓う呪術師の闘いを描く。

 主人公である虎杖悠仁と最初に関わり、処刑対象となった彼の助命を懇願したのが伏黒恵だ。今は虎杖の良き友人のひとり……と虎杖は思っているだろう。

 伏黒の父親禪院甚爾は呪術界御三家のひとつ禪院家の血筋で、将来を期待される呪術師である。その期待に応えるかのように呪術高等専門学校1年の中では唯一の二級呪術師として単独任務も許可されている。そんな伏黒だが、呪術師になりたいと思っていたわけではない。しかし、中学生のとき、その決意を揺るがすことになる出来事が起こった。

問題児だった中学時代

 虎杖、伏黒、釘崎がつくことになった任務。その調査で立ち寄ることになったのが伏黒の母校の浦見東中学校だった。その学校で伏黒は、後輩に会うなり盛大にビビられながら挨拶をされる(そうだ、伏黒たちはつい最近まで中学生だった)。校務員からは「伏黒君ほどではないが問題児」と問題児の比較として出される。ニュアンス的には、「君に比べたらかわいいものだ」というふうにも聞こえる。

「悪人が嫌いだ 更地みてぇな想像力と感受性でいっちょ前に息をしやがる」
「善人が苦手だ そんな悪人を許してしまう 許すことを格調高くとらえてる」

 それが、中学生の伏黒の価値観だ。大人びた考え方かもしれないが、生い立ち故だろう。

 伏黒には姉・津美紀がいるが血はつながっていない。伏黒の禪院甚爾と、津美紀の母親が出会い、付き合ったものの、2人そろって蒸発してしまったのである。伏黒は幼いながらに、蒸発資金なんてどこにあったのか疑問に思っていた。その疑問を解いたのが突然彼の前に現れた五条である。父親は伏黒を禪院家に売ったのだ。伏黒が禪院家に行かなくて済むように取り計らったのは五条だったわけだが、その条件は「伏黒が将来的に呪術師として働くこと」だった。それを担保に高専から援助をゲットしてきたわけである。

 しかし、伏黒は呪術師になる気などなかった。

「俺が誰を助けるってんだよ」

誰よりも幸せになるべきだった存在の大きさ

 実は一度、伏黒は津美紀を助けている。伏黒にはそんな意識はないだろうが、禪院甚爾が蒸発し伏黒の前に五条が現れた際に、禪院家に行くかどうか問う五条に伏黒はこう問い返している。

「そこ(禪院家)に行けば津美紀は幸せになれるのか?」

 100%ない、という五条に悔しげな表情を見せる伏黒。五条はそれですべてを察し、高専に話をつけて、禪院家に行かなくて済むように取り計らったのだ。呪術界で発言力が強い五条だからできたとも言える。伏黒にとって、姉の津美紀は大切な家族であり、自分のせいで不幸になることは耐え難かったのだろう。そんな津美紀が呪われ、寝たきりになる。原因は分からない。

「疑う余地のない善人だった 誰よりも幸せになるべき人だった それでも津美紀は呪われた」

 そこから導き出したのは「因果応報は全自動ではない」ということ。悪人は勝手に裁かれないし、善人が幸せになれるとは限らない。努力すれば報われる、といった言葉がむなしく聞こえてしまいそうだが、世界はそんなふうにできている。

 姉のことがきっかけで、伏黒は「少しでも多くの善人が平等を享受できるように 俺は不平等に人を助ける」と考えるようになったのだ。津美紀の存在があったからこそ、虎杖の助命を懇願するということにもなったのだろう。